愛のロック&ホールド

タカハシU太

愛のロック&ホールド

いろいろな愛情表現があっていいと思う。

多様性の時代なのだから。

だけど、他人が知ったら心配するかもしれない。

DVや虐待じゃないかと。

いや、ヘンな嗜好かと疑われたり。

だから誰にも言えない。

いいのだ。

アタシとカレの間にだけ存在する強い絆。

そう、がっちりと、きつく、ハードに。

最初は戸惑ったけれども、カレがそう望むのなら。

そして、アタシもいつしか快感を覚えるように。

あれ?

やっぱりアタシたちって、ヘンなの?

でも、いいのだ。

だから今日も手加減なしでバトルさせてもらう。

もちろん、アタシが仕掛けるほうだ。

えいっ!

腕ひしぎ十字固め!

サソリ固め!

卍固め!

そして、ついに初挑戦。

吊り天井固め、またの名をロメロ・スペシャル!

これは難易度の高い技だ。

そのために今日まで、がんばって筋トレや走り込みまでしてきた。

ええいっ!

カレの体が鮮やかに弧を描いて宙に浮き上がっているのを、アタシは目を輝かせながら下から見つめていた。

「ギブ?」

「ノー!」

まだまだ甘いみたいだ。

アタシはさらに力を込めた。

カレの間接がミシミシと音を立てる。

「ギブ?」

「もっと!」

表情は見えないが、きっと苦悶と恍惚の入り混じった笑みを浮かべていることだろう。

これこそがアタシのだいしゅきホールド。


               (了)

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