第2話

飛んでいた彼女はコチラをめがけて飛んでくる。

普通なら避けたりする状況なのだろうが、自分の体質、力が絶対だ。と信じている僕は、そんなモーションは取らず、ただ突っ立っておくことを選んだ。

開き直って言ってしまうと、相手の攻撃なんか僕にとってはどうでもいい。と思っていた。自分に酔いしれ、慢心していた。


「おやおや、何もしないとは。こちらとしては物凄くありがたいですねぇ」


鵜飼はニヤニヤしながら僕を煽る。だが、彼の声色はどこか焦っているようにも感じた。


そんな僕たちの会話は気にも留めず、彼女はお構いなしに攻撃してくる。


急降下しながら来栖に手刀を突き立てる。

その手が彼の右わき腹に当たると、その箇所はあっさりと切れ、内臓がまろびでる。


ここで僕は一つ疑問を持った。


何故彼女の手刀はここまでも切れ味が良いのだろうか。

確かに、物凄いスピードから繰り出される手刀なので、痛くないわけがない。だが、わき腹が切れるというのは、いささか切れ味が良すぎでないだろうか。


しかし、そんな思考は急に途切れることとなる。


「ぅゔぁぁあああぁぁああ!!!」


来栖の口からは大量の血が出る。溢れ出す。

体には激痛が走り、強い倦怠感に襲われる。


「な、なんで…」


僕は困惑していた。

口から大量の血が出ることではなく、強い痛みと、倦怠感に襲われたことに。


「ふ、ふふ、ふふふ、ハッハッハッハ!」


鵜飼は顔に満面の笑みを浮かべ、来栖を凝視しながら高い笑いをする。


長い間笑っていた彼は、僕に向かって言葉を投げかける。


「ツラいですか?!痛いですか?!どうですか?!貴方が万能だと信じていたその力が及ばない気分は?!!」


万能の力。

これは僕の特殊能力の事を指しているのだろう。


鵜飼のうざったらしい笑い声をもう聞きたくなかった僕は、「なんてことない!!」と笑ってやりたかったが、倦怠感が酷く、そうもいかない。


「ッ…グァ!」


「そうですか!そうですか!痛すぎて言葉も出ませんか!!いやーあの伝説の炎精蜥蜴サラマンダーも蜂の毒には太刀打ちできませんか!」


「蜂の…毒?」


僕はこの情報を頼りに、頭の中の情報にふるいをかける。

そして、最終候補に残った蜂はオオスズメバチ。


高い凶暴性と頑丈な顎を持っているその虫の毒は、蜂の中で最も強く、もはや人を殺す域にまで達している。


「太刀打ちできない…?案外…そうでもないさ…」


僕はなんとか体を起こし、臨戦態勢に入る。

体の倦怠感は徐々に消えつつあり、後数秒もすればすっかり元通りであろう。


「それじゃ、害虫駆除。いっちょ行きますか!」


僕は気合を入れなおし、虫の討伐に本腰を入れるのだった。

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