毛皮洗い

夏伐

季節折々に

 青空が広がるはるかな草原で、たくさんの猫たちが寝転がっていた。


 あたたかい季節とさむい季節の間の国で、うみゃうみゃと惰眠をむさぼっている。一匹の猫が空から差し込まれた大きな箸につままれる。


 ぐにゃんにゃんと伸びた猫は空中に浮いている大きくて透明な鍋に放り込まれた。ぼわんと猫の毛並みが爆発した。

 しゃぶしゃぶと猫が箸で揺さぶられる。

 また草原に戻されると猫は冬の国の方へ歩き出した。


 また箸につままれて猫が鍋に放り込まれる。


 今度はぶにゅんと毛が短くなった。猫は驚いたように暴れるが、ふりふりと鍋の中を揺らされてまた草原に戻された。

 猫は少し怒ったようにして、夏の国の方へ歩き出した。


 一匹一匹、猫は透明な鍋の中で洗われていく。


 そして草原からも一匹一匹立ち去っていく。


 春の国から来た猫は夏の国へ。夏の国から来た猫は秋の国へ。

 四季を巡るなか、猫たちは毛皮を着替えて立ち去っていった。


 ここは人間たちが噂する猫の国。

 ぽんやりと眠ることだけできる国。

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