第13話 筋肉痛の休日とお助け幼馴染
なんとか無事にクソ邪教徒共の発生させたダンジョンを浄化した俺は【全身筋肉痛】の状態で身体の至る所に湿布を貼り布団に眠っていた。
「あ~…やったわこれ。 完全に筋肉痛だわ」
久方ぶりに力を酷使したせいか、全身がズキズキと痛む。
起き上がろうにも”せめてトイレにいく位の力を残しておきたい”と思うせいで、無駄に動くわけにもいかなかった。
「今日は休みで…よろ」
何もない天井に向かってそう言い放つ。
すると辺りが光に包まれ、一筋の光がシヴァ教団の方へ向かっていった。
これは俺が休む時の合図で…どうしても身体が動かせない時にシヴァ教団へ連絡を取る手段のひとつでもある。
こうすることで、本来俺が行うはずだった浄化をシヴァ教団の人間に任せられるわけだ!
まぁ、それが難しい場合はほかの神共が違う教団の方々に応援を要請するらしい。
実際見た事はないが、青葉のおっちゃんがそう言っていた。
それにしても…休みとは言え、こんな状態ではなにもすることができない…
どうするべきか、頭を悩ませに悩ませた結果俺は――――
ピンポーン!!
「おぉ! は、入ってくれ!」
ガチャ。
すると赤髪で少し釣り目の見てくれはよさそうな女性が部屋に入ってきた。
「あ、あんたねぇ! 久々に連絡してきたと思ったら、お使いってどういう事よ!?」
紹介しよう、唯一俺が連絡を取れる存在で幼馴染の
幼少のころから一緒に育ち、なんだかんだとここまでズルズル仲良くやっている唯一の存在。
こいつの顔を見るたびに思うが、ほんとうに学生時代はトレーニングばっかりやってないで、友達を作っておけばよかったと後悔する日々である。
「いや~すまんすまん、恵令奈…春香は配信中だし。 親父たちは今、諸事情で連絡が取れないだろう~? となるとだ! 頼れる友はおまえしか――ぐほぉ! いてぇ!! おま! 全身筋肉痛だっていったろ!!」
「あんたねぇ! Aランク冒険者舐めんじゃないわよ! こっちだって暇じゃないんだからね!?」
「…どうも。 ありがとうございます」
「———よろしい」
そう、言い忘れていたが…何かをかくそう彼女はこの世界でもそこそこ珍しい【Aランク冒険者】なのだ。
「で…まだ家族に【浄化師】やってるって言えてないわけ?」
「……いやはや…まぁ…そう」
そして数少ない俺の事情を知る人間の一人でもある。
「まぁ、無理もないわね…【特級】の浄化師なんて言っても信じるかどうか。 おまけにあんた…いや、マリアンヌ様も相当苦労しているみたいだし? それに免じて、今日は一日面倒見てあげるわよ」
「一日って、パーティーの連中はどうするんだよ? それはありがたいが…」
「いいの、いいの! こっちはもう言ってあるし、それにあんた…その状態じゃまともに動けないでしょう?」
「———はい…」
完全に恵令奈に甘える形でその場に寝転がる俺は、天井を眺めながらボーっとしていた。
「暇すぎる」
「仕方ないでしょ! そんな身体なんだから…それにしてもあんたも複雑ね」
「———ん?」
「教団と冒険者ギルドの板挟み。 おまけに教祖達は【上級】の浄化師――で、あんたは世界でたったひとりの特級浄化師。 それが日当1万円って…イカれてんじゃないの?」
「俺もそう思う!」
「これが世界を救ってる奴の面なのかしら…」
ニヤッっと微笑んだ恵令奈はキッチンに立つと昼食の準備を始める。
というか、こいつには助けられっぱなしな気がする―――あの時から、なんだかんだ泣きついてでも頼れるのは恵令奈一人。
一応拝んでおこう。
「南無南無~」
「あんたがそれをやると縁起が悪いからやめなさい!」
と、まぁ月1度位のレベルでは彼女にお世話になる事が多い。
友達がいない俺も俺で悪いんだが…結果的に頼れる人物が1人しかいないというのも悲しい話である。
それから暫くして、結局夕食まで世話になった俺は今俺に出来る全力の土下座で彼女を見送る事にした。
「本当にありがとうございました!!」
「———よろしい。 それから遊魔!」
「はい!!」
「暇なときは、しっかりと連絡を寄こしなさい。 いいわね?」
「え――なんで」
「いいわねぇ!?」
「はい!! 連絡します!!」
――――――――あとがき―――――――
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