第11話 宝具

「我らがシヴァよ! 私に力を与えたまえ~!!!」


疲れ切った様子のおっさん事、青葉のおっちゃんはダンジョンの最深部で必死に自分の身体より巨大な白銀のチェーンソーを使い、大型の異形悪魔に向かって攻撃を繰り出していた。


ウィィィィン!!

しかし、リーチの問題なのか…はたまた彼の能力の問題なのか、おっちゃんの攻撃は悪魔の身体一歩手前の所で避けられる。


『グギャガギャギャ!』

「にしても、ノアさん…おっちゃんの弱すぎじゃね?」

「…そうですねぇ。 共鳴しているはずなのですが、どうにも身体が付いて来ていないようで。 おまけに近接戦闘用の宝具とあってか…現状ミスマッチですね…」


頭を抱える様子を見せるノアさん。

普段なら教団の人間が束になってダンジョンを浄化するのが当たり前なのだが、今回のようにこのダンジョンを守るボスモンスターに憑依し…悪魔が襲ってくるパターンも存在する。


悪魔とは前回も言ったように、人間の欲望や悲しみ…そういった負の感情が募れば募る程力を増す。

年月が経てば強化されていくダンジョン、更には時が経てばそれだけ人間の感情が募っていくわけで、正直数人程度の少数精鋭では太刀打ちできない場面も出てくる。

だからこその最終兵器が教祖のみに使用が許されたの存在となるわけだが…


「あれじゃあ、駄目だな…」

「ですねぇ…現状難しそうですが、もう少しやらせてみましょう」

「了解」


夫であっても容赦ないノアさんの返答に二つ返事で答えた俺は彼を見守る事にした。

突如ノアさんから連絡があり、緊急の依頼というわけで…ダンジョン最深部へとやってきた訳だが教団のメンバーも悪魔共に苦戦している様子。

それだけ年月が経っている古いダンジョンだという事が解る…


「そういえば、遊魔さん」

「はい?」

「悪魔というものは、我々教団以外の人間には少し変わったモンスターに見えるらしいですよ?」

「へぇ~…どうやって見分けを?」

「攻撃が通るか、通らないか…でしか現状は判断できないようです」

「でしょうねぇ…」


悪魔の存在を発見し、これだけ年数が経った今でも悪魔が出現する条件が【ダンジョン攻略後】以外に確定した情報が未だない。

本当か嘘か、悪魔がダンジョンにちらほらと出現している等という話も聞いたことがあるが、その真意は未だ謎のままである。


「ダンジョンというものは、一度最深部のボスモンスターを倒す事で再び生まれ変わります―――ですがそれまでの期間は未知数…お告げがない者達は入ってみないと解らないというのも、あまりに曖昧な話ではありませんか?」

「悪魔探知機みたいな兵器はないもんなんですかね…」


毎度毎度、神のお告げが無ければ解らないというのも変な話だ。

実際問題、俺達教団も出現したダンジョン全てを浄化しているわけではない…都心部や人間が多い所以外の浄化は基本的に行わないのがギルドとの規約である。

ただし、前回のように所有するダンジョンが崩壊に向かっている場合は緊急処置をとる事もあるのが事実だ。


「あればどれだけ楽な事か。 遊魔さんはに神との交信が出来る状態ですが…我々や、そして彼のような教祖でも神を祀る教会でなくは声を聴けることはありません。 今回は本当に助かりました」

「いやいや、ちなみに常に交信してるわけじゃないですよ?」

「———そう、なのですか?」

「えぇ、うるさいときは遮断してます」

「な、なるほど…そういうことも出来るのですか」


あくまでも神と俺は平等な立場なので向こうから強制的に交信してくる事はない、あいつらの声が聞こえるのは俺がしたときのみである。


「ふふっ…まぁそういう方もいるのでしょう」

「いい雰囲気の所失礼しちゃうんだけどさぁ!? ちょ、ちょっと手を貸してくれないかな!? めちゃくちゃ手が空いてるでしょ!? 君たち!?」


今にも泣きだしそうな顔をしている教祖のおじさんは並んで駄弁っている俺達を見て必死に助けを求めていた。


「………」

「…まだです」

「了解…」


ノアさんにどうするべきか判断を仰ごうとした時、それを察したのか小さくノアさんがそうつぶやいた。

流石は鬼…悪魔…魔王とまで称されたである。

例えそれが自らの夫であっても判断を怠らない、まさに平等だろ? と言わんばかりの決意の表情でおっちゃんを見つめている。

すかさず俺も親指を立ててエールを送っておいた。


「ファイト~…」

「うわぁぁぁぁぁぁ! 死ぬ死ぬ! まじで死んじゃうよ、おじさん! 本当だよ! こらあぁぁぁ~!! 教団の皆~! 私を助けてくれ~!!」

『グギャガギャギャ~~!!!!』


巨大チェーンソーを震わせながら、小太りのおじさんが逃げ惑う姿は滑稽である。

お腹の脂肪を揺らしながら、まるでダイエットマシンを駆使してトレーニングをする中年おじさんそのものだ。


「遊魔さん? 助けてはいけませんよ? あの人はすぐ楽をしようとしますから、時に厳しくです! あとで一杯甘やかしてあげますから♪」

「…おっかねぇ…嫁だ」

「どぅぅわぁぁぁぁぁ!! 死ぬ死ぬ!! 嘘じゃないよ! ほんとだよぉ!! おーーーーーーーい!! 遊魔くん! 遊魔くぅぅぅぅん!!」



それから悪魔との鬼ごっこは数時間にわたり続いたという。

鬼教官ノアさんによると「普段鍛錬を怠っている事を証明するため」にあのような行動に出たのだとか…おっちゃんドンマイ!!


――――――――あとがき―――――――

気付けば11話! 説明だらけだと疲れるんで散り散りにしていますが…解り辛かったらすいません! 年末はもしかすると更新できないかもしれないです!


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