第9話 妹とシスター
「ってな感じでね! 皆、お兄ちゃんを心配してるんだよ。 2年前に出ていくって言ってからほとんど連絡もないし…なんでお兄ちゃんは私達のギルドに入らないの? ねぇ?」
クリクリお目目が愛らしい小動物と言っても過言ではない見た目をした我が妹事【春香】は俺にそう詰め寄る。
相変わらず膨れた顔も愛らしい!! まさにハムスターみたいなやつだ!
現在俺は妹の誕生日を祝う為に…朝から彼女の家にお邪魔している。
流石は金持ちというべきか、至る所に最新の家電や機材が設置されており、もはやスタジオと言っても過言ではない程の迫力を感じる。
おまけに部屋の広さは、俺と比べ物にならないくらいの広さである…逆に落ち着かないんだが!?
「——あ? え? あぁ~ギルドに入らない理由か? まぁ、ほら…俺ってあんまり目立ちたくないっていうか。 平凡に過ごしたいっていうか?」
「…私たちが目立ってるから迷惑ってこと?」
うるうると瞳を揺らしながらこっちに何かを訴えかけてくる春香の顔は反則である。
思わずポロっと本当の事を話そうになるが、ギリギリの所で思いとどまる。
「違う違う! なんていうか、さぁ~ 春香と親父と母さんにも理由があるように、俺にも理由があるんだよ。 3人は有名になりたい!とか強くなりたい! とか明確に理由があるわけだけど…俺は毎日を平凡に過ごせればそれでいいんだ」
「う、うん…それは解ってるよ…」
「だからこそ、そこで無理やり3人と合わせるようになったらそれこそよくないだろ?」
「…解ってるもん。 言ってみただけ…」
「ありがとな。 心配してくれて…」
優しく春香の頭を撫でる。
流石家族思いの良い子だ…だからこそ今では人気のダンジョン配信者として成功しているのだろう。
「それにしても春香はすごいな! この前の配信も見たけど、Aランクのダンジョンでモンスターをちぎっては投げ! ちぎっては投げ! 流石は妹!」
「えへへ…ありがと。 そういえば話は変わるんだけどさ? 本当にお兄ちゃん…夜は一緒にいれないの?」
「あ、あぁ…ごめんな。 うちのパーティーの連中が夜専門の冒険者達でな…けど。 母さん達には内緒だぞ?」
折角のめでたい妹の誕生日だというのに俺は両親達との接触を避けるために、その場で思いついた嘘まで付く始末。
せめて春香だけにはと思ったが…大人の事情に無垢な彼女を巻き込むわけにもいかない。
「そうだ。 春香に誕生日プレゼントを渡してなかったな、17歳の誕生日おめでとう!」
思い出したかのように懐からプレゼントを取り出した俺は、彼女にキレイに包装された箱を手渡した。
「わぁ! ありがとう! 何かな? 開けてもいい?」
「あぁ、いいぞ」
「…わぁ! かわいい! クマのブローチだ! 見た事ないデザインだけど…どこで買ったの?」
箱を開けるとそこには可愛らしいクマのブローチが入っていた。
綺麗な白いクリスタルでクマの形をしているそれの中央部分には黄色いクリスタルがはめ込まれており、よくみるとクリスタルの中に小さな×印が見える。
「近くの雑貨屋さんでな。 かわいいだろ?」
「うん! とっても! でも、お腹のこの×印みたいなのはなんなんだろう?」
「~? さぁ~…最初はキズかなと思ったんだけど。 そうでもないみたいで…」
「へぇ~! でも可愛いね!」
「喜んでもらえたようで何よりだ」
「うん! ずっと付けておくね!」
「あぁ、俺だと思って付けててくれ」
妹の喜ぶ顔が見れたので結果オーライという所か…本当は夜も家族水入らずで誕生日パーティーと洒落込みたかったのだが。 今日はどうしても外せない用事が出来てしまった。
両親との接触もある程度は制限しないといけない所ではあるが、それも正直向こう側が変な探りを入れなければいい話で…はぁ~疲れる。
―――――――――――――――――――――――――――
それからしばらくして、とあるダンジョン近くへやって来ていた俺は―――
「フフフフ…我ら教団の邪魔をする外道共め! 滅ぶがいい!!! ぬははは!!」
「ぐぁぁぁぁ!! こ、こいつが噂の!? だ、誰かギルドに応援を! 教団の人間に侵入されてしまうぞ!」
俺はダンジョンゲートの前で大量の冒険者達を返り討ちにしていた。
すると隣を通りかかった修道服姿の女性が手を合わせてこう告げる。
「あぁ、我らが聖女マリアンヌ様にお礼を。 ありがとうございます。 さぁ! 皆さまも一緒に!」
「「「「「ありがとうございます! マリアンヌ様!」」」」」
一人の冒険者がこちらを睨みつけ一言…
「くそぅ…聖女マリアンヌ! お前さえいなければ俺達ギルドが保有しているダンジョンを浄化されずに…」
「我ら教団と契約を結んだ筈だ。 ダンジョンの期限がやってくればこちらから浄化を開始すると」
「だ、だったら! 具体的な期限位教えてくれてもいいじゃねぇか!」
「それは解らない。 明日かもしれないし1年後かもしれないし、100年後かもしれない」
「くっ…それはあんまりだろ! いつもいつも…いいところで邪魔ばかりしやがってぇ! いけぇ!」
「通れるものならば通ってみるがいい!! ぬはははは!!」
ブォン!!
全長3mは超えよう巨大メイスが辺りのコンクリートを粉砕しながら、冒険者たちを次々となぎ倒してゆく。
「「「「ぐぁぁぁぁぁ!!!!!!」」」」
聖女マリアンヌ。
修道服姿がはち切れんばかりのグラマラスなスタイルでありながら全長3mの巨大メイスを振り回す、骸骨のマスクを身に着けた髪の長い金髪の女性。
「悪い冒険者にはお仕置きが必要だろう? 浄化ぁぁぁぁぁぁ!!」
「「「「どぅわぁぁぁぁぁあ!」」」」
「応援だ! 応援を呼べ!! 早く!!! 至急報告するんだ! 聖女マリアンヌが現れたとなぁ!」
それが俺の表の姿である。
「にしても…このおっぱい邪魔だな…動き辛くて仕方ねぇ!」
――――――――あとがき―――――――
昼の時間も活動しているブラックっぷり…聖女マリアンヌ様として活動する主人公。
なぜ両親と会う事がいけないのか、それは次回のお話で!
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