第4話 シスターのお仕事

見知らぬ街へやってきた俺はスマホの地図を頼りに、ある住宅街へやってきていた。

見知らぬ街の見知らぬ家…そこのインターホンを鳴らす。


ピンポーン!


「は、はい!」


神々の情報によればここには最近引っ越してきた若い夫婦とその娘が住んでいるらしい。


「どうも~、シスターです。 最近、家が突然揺れ始めたり…夜な夜な聞き覚えのない声が聞こえてきたり。 娘さん含めてご家族の方の体調が長期に渡って芳しくない事はありませんか?」

「!? ど、どうしてそれを…!? ちょ、ちょっと待ってください!」


ガチャ!


「あ、あの…教団の…方? で、すか?」


現れたのは30代程の女性で、かなり疲れ切った様子なのが見て解る。


「あ、あぁ…はい。 そんなもんです。 見たらわかるでしょう? シスターです、シスター」

「は、はぁ…シ、シスター…教団の方で男性の方もいらっしゃるんですね…は、初めてなので…つい…」

「いえいえ。 それで、お邪魔させて頂いても?」

「は、はい! どうぞ!! 散らかっていますが、お上がり頂けると!」


家の玄関にはいるとまず俺はあたりを見渡した。

するとどうだろうか、辺り一面からはゆっくりとではあるものの黒い霧の様な物が少しずつ廊下に充満しつつあった。


「あの~…」

「は、はい!!」

「この土地の権利書って見せてもらえます?」

「は、はい!! 権利書ですか?」


ドタドタドタ!

俺を待たせてはいけないと思ったのか、何の確認も行わず素直に土地の権利書を取り行った女性。

流石は教団の人間というべきか…教団の力おそるべし。


「お、お待たせしました! こ、これです!」

「失礼…」


すぐさま渡された権利書に目を通す。

権利書に何が書いてあるかはどうでもいい、俺が見るべきポイントはひとつである。


「………ない」

「…ない?」

「えぇ、ここに担当の人間の判と。 教団の人間の判がないんですよね…」

「きょ、教団の方の判ですか!?」


そんなもの普通はないですよ!?と言わんばかりの表情をみせる女性。

しかし俺はこの方に真実を伝える事が仕事の一つでもある。


「もともとダンジョンがあった土地には教団が安全を確認した後に引き渡されるってことは知ってますよね?」

「え、えぇ! それくらいは! 元々…ダンジョンがあったら…も、も、もしかして!?」


何かに気付いたのか女性の顔は見る見る青くなっていく。

まぁ、そりゃそうなるよな…


「えぇ、元々ここ…ダンジョンですね」

「…!!!」


驚きの事実を突きつけられた彼女は何か決意したかのような表情で俺をじっと見つめた。


「ど、どうすればいいですか?」

「む~…そうですね、まずはその書類に判を押すとしましょうか~」


そう告げた俺は懐から”まるで女神像のような奇抜なデザイン”をした普通の判子を取り出し、そのまま書類に判子を押した。


「こ、これは!?」

「それは”特級”の判です。 裁判では確実に勝てるので、元会社に好きなだけ吹っ掛けても大丈夫ですよ…」

「と、と…特級!? と、と、と、特級っていうと上級のさらに…」

「えぇ、そうです。 それと娘さん達を連れてこの家から避難してください。 もちろん、貴重品等は忘れずに」

「は、はい!!」


慌ただしい様子でリビングの方へむかった女性はリビングで家族に話を始める。

その間俺はあたり一面に立ち込める霧を、首元にぶら下げている小さな十字架で除去してゆく。

霧の除去に時間がかかる事から、かなり危ない状態だったという事が証明された。


「こりゃ、そこまで時間がない――!?」

「きゃぁぁぁぁ、こないでぇぇぇ!」


すると突如奥の方から少女の叫び声の様な物が響き渡る。


「ちぃ! ヘル&ヘヴン! こい!」


ガチャガチャガチャ…と音を立てながら目の前に現れた黒い靄と白い靄、その中から姿を現したのは1.5mはゆうに超えよう巨大な白と黒の十字架だった。


『認証』

という声が頭に響くと俺は展開した十字架をすかさず構えると目の前で少女に跨る悪魔の頭部目掛けて銃弾を浴びせる。


ダダダ!!


「浄化ぁぁぁ!!」

「「「!!」」」


そのままリビングと向かう俺は疲れ切った家族を庇うように前にでた。


「あ、あの!! あ、あれは!?一体」

「気にするな…モンスターだ。 はやくあんた達は避難した方がいい…少しなら時間がある。 今のうちに大事な物をまとめていくんだ!」

「は、はい!!」

「お、お兄ちゃん…ありがとう」


目の前にはガリガリにやせ細った少女が、虚ろな状態ながらもゆっくりと頭を下げた。

クソ悪魔共め…まさかこの子から養分を得て急成長を遂げていたとは…


「ほら、これで楽になるはずだ」


ゆっくりと手を少女の頭の上に乗せると、少女の身体が強い輝きを放つ。

するとみるみるうちに顔色は良くなり瘦せ細った身体も元に戻っていった。


「!? き、奇跡だ…」


その光景を見てか隣の男性は俺に手を合わせるような形で座り込んでしまった。


「そんなことをしている場合か。 さっさとこの子を連れてここを去りな…」

「は、はい!! あ、ありがとうございます!」


さて…ここからがいよいよ本番だ。

リビングのソファを蹴飛ばし、床を十字架で破壊する俺は丁度地面が見えたところである物を発見する。

それは黒い小さな粒上のもので、まるで次元の歪みのようにも思える。


「やっぱりあったか…ダンジョンゲート」


家から家族が避難したことを確認した俺は家全体に結界を張る。

そして―――――――その小さな黒い粒に吸い込まれるようにその場から姿を消した。




――――――――あとがき―――――――

シリアスな感じでいこうかなと思ったんですが途中で折れかけました…


フォロー、ご評価もよろしくお願いいたします。

十字架武器っていいよね!? 最高だよね!!

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