第3話 神を信じなかった男
俺は夢を見ていた。
これは…鑑定式の日だろうか?
鑑定式とは16歳を迎える誕生日に教会で鑑定を受け、自らの職業を決定する儀式の事である。
この儀式は将来を決定づけるようなものであり、かなり重要なイベントの一つだ。
そこで俺は家族に見守れる形で鑑定を受けるも――――
「ふむ…無職。 のようですね」
年配の男性がそう告げると俺の両親達は落ち着いた様子で大きく頷いた。
俺の両親達はエリート中のエリートで、父は世界に数人しか存在しないSランク冒険者の一人。 そして母は超大手ギルドのボス。
更にはまだ16歳を迎えていない妹はというと、配信者として有名になりつつあった。
そんな俺が無職…そうか…残……ラッキーー!!!!
両親達には今にも泣きだしそうな程の申し訳なさそうな顔を見せつつ内心はめちゃくちゃ喜んでいた。
それはなぜなのか、それはこれで期待され生きる人生に区切りを付けられるからである!
誹謗中傷や世間の当たりは強いかもしれないだろう…しかぁぁあし!!
これでやっと俺は憧れの”地味”オブ”地味”の人生を送れると考えただけでこの場で謎ダンスを繰り広げてやりたい気分である。
なんせ冒険者になれば、たとえ無職であっても食ってはいける。
別にモンスターなんて倒せなくとも、薬草拾いや荷物持ち。 なんでも仕事はあるのだ!
こ、これで…これで両親達から解放される!!
どうだ見たか! 神や女神が居なくとも俺は俺だけの人生を歩んでゆける!!
くそくらえ!! 神共め!! ぬははは!!!
この世界に神等存在しない、なぜなら俺はエリート中で唯一の【無職】なんだからな!! ぎゃはははは!!
喜びも束の間の出来事である。
広い教会の中で極秘裏に行われた鑑定式は俺と両親と教会の神父の合計4人だけで執り行われていた。
だからこそ”その他”の人物の声が聞こえてくる等、ありえない事なのである。
しかし――――――
『素晴らしい…』
『…聖力を全く感じない…まるで悪魔のような』
『…遂に見つけた…』
『…天使と悪魔その間…』
『…いまこそ覚醒の時…』
『…我らが使い…』
『…希望…』
『……この世界を……』
『………闇の力…』
『光の力……』
『……ならば最後の力はあの神父に……』
『……………』
突如脳内に鳴り響いて来た謎の声…まるで複数人に話しかけられている様な気分で気持ち悪い。
しかし、辺りを見渡しても3人以外の気配は何も感じない。
「ど、どうした!? 遊魔?」
「どうしたの!? だ、大丈夫!?」
違う、アレも違う…これも違う!
最後に俺は神父の方を見つめ、神父にだけ見えるように天井に向かって指を差した。
するとその神父も顔を真っ青にさせながらゆっくりと頷いた。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「どぅわぁぁぁぁぁぁぁ!!」
布団から飛び起きた俺は、全身汗まみれであった。
久しぶりに”あの時”の夢を見た気がする。
まさかあれから4年…こんなことになろうとは、時間を巻き戻せるなら4年前の俺に言っておきたい【神は絶対信じておけ】と。
”世界一”神を信じていなかったせいで、こんな結末を迎える位ならば、神を信じて【無職】のまま生きたかった。
「はぁ…で? 今何時だ?」
携帯端末の画面を見つめると時刻は21時30分。
「そろそろダンジョンが【活性化】する時間か」
この世界のダンジョンは22時を迎えると【活性化】という状態に入る、これはモンスターの力が一定量増加し…ドロップアイテムや経験値が多くなり。
冒険者にとっては嬉しい時間でもあり、もっとも危険な時間でもある。
モンスターの力が一定量増加するとは言ったが、その力は稀に途轍もなく強力になっている場合もあったりと色々と不安要素が多い時間でもある。
故にダンジョンで最も死亡事故が多いとされる時間がこの【活性化】の時間だ。
初心者やベテランともなればこの時間は大人しく家に籠っている事が多いのだが、リスクはあれど明確なメリットがあるせいで、この時間をメインに活動する者も少なくはない。
「さて…浄化、浄化と…」
支度を始める俺は歯磨き等を済ませると、アパートの階段を降りバイクに跨った。
「あら! 遊魔ちゃん! お仕事の時間なの?」
するとバイクのエンジン音を聞いてか、すぐ目の前の扉が開くと寝間着姿の年配の女性が姿を現した。
「おばさん! そうだよ…ったく。 人間、こんな時間から仕事するもんじゃないと思うんだよな」
「まぁまぁ、そんな膨れないの。 ませておいて、あの子たちには上手い事誤魔化しておくから♪」
「いつもいつも、すみません」
「いいのよ~♪ それに、あの子達にそんな突拍子もない話しても信じるわけないじゃない♪ だから安心して世界の平和を守ってきなさい!」
「せ、世界の平和って…」
「あら♪ だってそうじゃない~あの子達が攻略したダンジョンもぜーんぶ! あなた達が居ないとなにも解決しないんだから!」
「ははは…いや、けど。 全くその通りで…」
「それじゃ、いってらっしゃい!」
にこやかに笑うおばさんを見つめながら俺はゆっくりと頭を下げる。
「んじゃ、行ってきます」
「えぇ♪ 頑張るのよ! 浄化♪浄化♪」
「浄化ぁぁぁぁ!!」
ブォン、ブォン!!
アクセルをふかしながら、目の前に現れた白い靄の様な物に向かって俺はそのままバイク事突っ込んでいった。
そして―――おれはその場から姿を消した。
「……いつ見ても、この光景だけは見慣れないわね~…転移魔法だとか何とか言ってたけど~流石は神様の使いね♪」
――――――――あとがき―――――――
シスター服でバイクに跨るってかっこよくないですか? え!?
もしかして僕だけ、そう思っている!?
フォロー、ご評価もよろしくお願いいたします。
十字架武器っていいよね!? 最高だよね!!
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