第8話
同時に、のちに渠が語ったところによると、
「このとき、それがしは決意いたしました。みずからが若様にとっての姉上の如き存在になろうと」
という思いを抱いたらしい。
……しかし、俺はなぜそのようなことを知っている?
梵天丸――政宗は思った。
“当時”は“まだ”知らぬはずの事柄――そこまで考えかけたところで、渠は気づく。
これは夢だ、と。
目を開くと、そこは寝所の褥(しとね)のなかだった。
そこに横たわっている己は、九歳のまだ元服すら迎えていない梵天丸ではなく、世に“独眼竜”の呼び名で知られる伊達右近衛権少将政宗だ。
ふぅ、と渠は自儘(じまま)なふだんの振る舞いには似合わない物憂げなため息をつく。
己の人生は、常に黄昏(たそがれ)のなかにあった、と思う。
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