第3話

 ……相手を認識した瞬間、維新入道の業前が鈍る。

 大刀に“欠け”をいくつも障子させ、受け損ねた“棒”に体を打ち据えられた。

 弟に打たれているという事実に、実際の一撃以上に維新入道に傷みを感じさせる――。

「よさぬか――よさぬか、又六郎!」

 思わず、悲鳴じみた声で左衛門督の通称を呼んだ。

「ぬかせ、この慮外者ッ。猿面冠者の走狗となりそれがしに討手をさしむけるような不忠者の言葉など聞くに値せぬ!」

 左衛門督の言葉が、見えない矢となって維新入道の四肢に突き刺さる――さらに、渠は動きを鈍らせた。

 そんな維新入道を見て、島津左衛門督は嗤(わら)う。

 槍の柄を投げ捨てるや、腰間の大刀を抜き放ち迅影と化して襲いかかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る