レクイエム・静かな願い

 ぼんやりと、天井を眺めた。


 久しぶりの橋渡しで疲労したのか、体が思うように動かない。

 だるさを振り払うように、台所で、橋渡しのお茶を淹れてみた。


「……」


 一口、二口。


 口に含んで、閉じた瞳の中に、鮮やかな橋を見る。

 歩いてゆこうと踏み出せば、踏み出すことは可能だ。


 けれど。


 幾つもの穏やかな微笑みが、揃って「来るな」と制止した。

 目を開けて、こちらではなく、来た方を見てほしい、と。


 ──橋を渡らず引き返すと決めれば、引き返すことも、無論可能だった。


「……」


 ぱちりと、目を開く。


 何度か瞬きをしてから、誰にともなく頬笑んだ。


「滋養ブレンドでも追加調合するかな」


 あくびを噛み殺し、軽く洗った、丸のままの差し入れの林檎にかじりついた。


「……美味しい」


 微笑みは、穏やかな苦笑いに変化していた。





-終-

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お花の町の真ん中カフェ~田舎のカフェの不思議譚~ 水無月 秋穂 @kosekiryou

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