第4話

翌朝、俺が落とした薬莢やっきょうの捜索が再開された。


駐屯地から、3トン半と呼ばれるトラックが、続々と練習場に到着する。

トラックからは他の中隊の隊員が降りてくる。

また、別のトラックからは、食料が下ろされていく。


薬莢捜索の増援部隊である。

俺が薬莢を落としたせいで、こんなにも人が集まってきてしまった。

トラックは当然、燃料を使ってここまでやってくる。

そして、捜索隊の食料も必要となる。

俺のなくし物のために、多額の税金が使われている……



薬莢の捜索は延々と続く。

四つん這いで地面を捜索する班と、埋めた掩体壕を再び掘り起こして捜索する班とに分かれる。

俺の横には常に上官がつき、どこを歩いたのかすべて思い出せと、一日中言われ続ける。


もう、誰の顔も見たくなかった。

仲間たちも、俺の顔を見ると気まずそうに視線をそらす。

一応は気を使ってくれているのだろう。

中には、俺が先に見つけてやるからな、などと明るく言ってくれるやつもいて涙が出てくる。


隊長は言った。


「間隔を50cmとする」


隣の仲間との間を50cmまで縮めて、密集隊形で前進していく。

しかし、薬莢は見つからなかった。


今日も見つからないのだろうか。

そうなると、さらに駐屯地から増援の隊員が来ることになる。

絶対に今日中に見つけなくては。


日が沈んだ。

懐中電灯を使いつつ、四つん這いでの捜索を続ける。


空には月が昇っている。

当然のことながら、月は昨夜より満ちている。


明日も捜索が続くのだろうか。

そんな絶望に襲われていた時、どこからか大声が聞こえてきた。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る