第27話 そして伝説になるかも? エピローグ
「――良かったですわ!! エドナがお母さまの家に暮らすだけでなく、わたくしたちが通えなかった魔法学園に入学するんですもの! 自分に代わって応援いたしますわ!」
セリアは冒険者の道を選び、早くから家を出ていた。そして魔法学園に入学することも無かった。その夢が、ずっと一緒に見てきた女の子が代わりに入学する。
そのことに喜んでくれるセリアを見て、エドナは思わず涙を流した。
そして。
「おめでとう、エドナ。リズも祝福」
「ありがとう。リズ! リズも入学しようとしてたんだよね?」
「ん。でも悔いは無いから。だからエドナに頑張って欲しい。リズの代わりに」
「うんっ! 頑張る!」
「……でも程々に」
エドナの危うさを分かっているリズもまた、エドナの魔法学園入学を心配しながら祝ってくれた。
ライラはというと。
「私はレジェンダロアに戻って、そこからまた鍛え直す。そうじゃないとセリアたちに置いてかれるからね。だからエドナ。エドナも問題をなるべく起こさずに頑張るんだよ! そしてまた一緒に冒険が出来たら私も嬉しいから、その時まで待ってるよ」
そう言って、ライラは故郷のレジェンダロアに帰ってしまった。残されたセリアとリズはしばらくリルの家で過ごした後、姉妹だけで魔法の修行に出ていった。
そして入学。
「え、えーと、わたしはランバ……じゃなくて、エドナ・ランバートです。み、みなさん、よろしくお願いします!」
エドナの言葉に盛大な拍手が送られる。
賢者として初めて紹介されたエドナは、学生たちの前で賢者としての力を披露することになった。
「おい、あいつ……あの時の女じゃね?」
「本当だ! あいつが賢者? じゃあスタンピードの時の問題事って――」
オーガと遭遇した時に出会った二人の少年もまた、魔法学園に入学を決めていた。彼らを含め、トレニア帝国における魔法学園の生徒はその多くが貴族の子供である。そのせいか、貴族でも無いエドナに対し非常に厳しい視線が送られることに。
「そ、それでは、軽くですけど、わたしの得意魔法で……水で膜を作ってみなさんの中の誰かを水膜で包んで、校内を回ってもらおうと思います」
きっと上手くいくよね。だって水膜とか水泡は散々使っていたし、失敗も少なかったわけだし。
信用しない、信用する――そんな生徒たちを前に、エドナはいつもの動きで両手を交差させ、前世でいうところのシャボン玉を空中に作り出す。
そして生徒たちを眺めながら、唱えを始めた。
「で、では、《バブル》!! よぉぉし、いっけぇぇぇ!!」
これなら泡だけ動いてくれるはずだよね。大丈夫、大丈夫。
エドナ自身も普段なら自分が繰り出す魔法に不安を抱えることは無いのだが、今回は記念すべき入学。この日の魔法を印象付けて信じてもらうことだけを考えて、いつも以上に心配しながら魔法を発動させた。
すると、生徒の中から驚きの声がちらほらと聞こえてくる。
「きゃっ!? あっ……す、すごい」
「うおっ? お、おぉ……すげぇ。浮いてる……それにみんなの姿が見えてる」
「これが賢者の力! この水泡なら浮遊城のパパに会いに行けるかな」
……などなど、評判は上々のようだ。
「以上で、わたしエドナ・ランバートのお披露目魔法を終了しますです!」
エドナは問題を起こすことを知らない人を助ける賢者として活躍している。
しかしそれは何も知らない状態の人までの話。
「うわ、あいつだ……あいつが問題児の賢者だ。エドナに何かやらせると絶対何か起こるらしいぞ。だからやめといた方がいい」
「う~ん。でも何もしなければ可愛いし、いい子なんだよな」
「そういえば告白した奴が間違って、国境所に送られたとか何とか……」
「うへぇ、まじかよ」
――といった感じでエドナの悪評と好評がいつまでもトレニア帝国に言い伝えられることになる――のかもしれない。
「エドナの奴はちゃんと賢者として人様のお役に立っているのかのぅ」
「あたしは途中で見て来たからな! 精霊の使い方は完璧だと思ってる」
「シフルとノオム……おぬしらは何か加護……いや、会いに行ったりはしないのかの?」
「あの子の成長はあの子が魔法を使うたびに感じられるので、それだけでいいですよ」
「またいつか土遊びが出来ればその時は、みんなでゴーレムで遊ぼう! それだけでいい」
ここから先、賢者エドナ・ランバートは果たして何の問題を起こさずに過ごして行けるのでしょうか。それは多分、本人も分からないことかもしれない。
真面目に掃除してただけなのに問題ありまくりの賢者に生まれ変わっちゃった~えっと、わたしが最強でいいんでしょうか?~ 遥 かずら @hkz7
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