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「お医者さんはどう言ってたの?」

 持って来た林檎を器用にナイフで剥きながら、おばさんが尋ねた。

「とりあえず何日か入院して、その後は栄養指導を受けるんだって」

「そう……治りそうなの?」

「治すよ。私の場合は完全な拒食症とは違うとも言われたし。それに、もう迷惑なんてかけたくないし……」

「ほんとにね! もう二度とやめて欲しいわ、こんな思いさせるの!」

「ごめんなさい……」

 小さくなって謝るとおばさんが声を上げて笑った。

「あはは、ごめんごめん! 秋ちゃんったらもう!」

「えっ、なんで私?」

 ひとしきり笑った後、不意におばさんが呟いた。

「まさかとは思ったのよねぇ……」

「え? 何が?」

 なんのことだろう。前から思っていたけど、おばさんはいつも話が唐突すぎると思う。

「この前私が電話したとき、元気にしてる? って聞いたら、秋ちゃん、『大丈夫』って答えたでしょ?『うん』でも『元気だよ』でもなくて、『大丈夫』って」

 そうだったかな。そこまでは覚えてない。私は戸惑いながらおばさんの言葉を静かに待った。

「雅也がね……言ってたのよ、ずっと前に」

「えっ、何を……?」

「んー……なんかねぇ、『秋が無意識に〝大丈夫〟って言ったときは大丈夫じゃないときだから、気を付けてくれな』だってさ。まさかとは思ったんだけど……もっと早く来るべきだったわ」

 そんな癖、自分でも気が付かなかった。だから雅也はいつも、そばにいて欲しいときには必ず隣にいてくれたんだ。

「あの子、本当に秋ちゃんのこと想ってたのねぇ……。そこまでよく見てるなんて、私もびっくりよ」

 思わず涙がこぼれた。慌てて顔を手で隠す。

「愛されてるのね、あきちゃん。ちょっと妬いちゃうわあ~」

「もう、やめてよおばさん」

 本当に何一つ、不安になったり心配したりする必要はなかったんだな。雅也は本当に私を想ってくれていたのに。

 ──いや、想ってくれている、のかな……今でも。

 そう思うと心の底から幸せな気持ちが押し寄せてきて、なんだかとてもあたたかくなった。まるでプレゼントをもう一つもらったみたいで。もう一粒、涙がこぼれた。

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