5


 青かった空に、徐々に茜色が挿されていく。さっきまでじりじりと肌を焼いていた太陽も、いつの間にか柔らかな暖かさに変わっていた。

 夜が来る事を知らせる風が、まだそこに馴染めていないグリーンのカーテンの間から吹き抜ける。

「ごめんね、結局取り付けまで手伝ってもらって」

 家に帰っていざ取り付けようとしたものの、高い窓に長いレールが二つ。一人ではどうにも難しかった。そこで仕方なく、一緒に帰って来たばかりの藤村君に手伝いを頼んだ。一人では何も出来ない自分に嫌気がさす。

 小さな組み立て式の丸いローテーブルを運んで、「大丈夫、大丈夫」と言って手を振る彼にそこへ座るよう促した。

「麦茶でいい?」

「あ、もう何でも。お構いなくー」

 私もそばに座って麦茶の入ったグラスを藤村君の前に差し出した。

「本当にありがとう、助かりました。何かお礼しないとね」

「いいって、別に。大したことしてないし」

 麦茶を口に運びながら彼は言った。

「でも、それじゃあ悪いし……」

 自分の分の麦茶をグラスに注ぎながら私は言った。透明なグラスの中で、氷がカラカランと涼しい音を鳴らす。

「そーかなあ……?」

「うん、なんかお世話になりっぱなしじゃすっきりしないし、何か私に出来ることあったら何でも言って」

「うーん……」

 そして藤村君はしばらく黙った後、「じゃあさ、お願いがあるんだけど」と微笑んだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る