第10話 聖剣
カールハインツが俺に言う。
「アニエス様、それは考えすぎではありませんか。」「そうかもしれませんが・・・」
俺は言いよどむ。この時、アニタが発言する。
「カールハインツ様、嘘は良くありませんよ。」「私が嘘をついているというのかね。侮辱するつもりですか。」
「私には嘘を嗅ぎ分けられます。獣人の鼻を甘く見ないでください。」
俺はアニタがはったりをかましていると考える。
「私たちの調査には、真実を知る必要があります。ここで聞いたことは他言しません。領民のためにお願いします。」「私の領民を人質に取るのか。」
「いいえ、ルマールを守るためです。」「アニエス様は領民を守ってくれるのですね。」
「力を尽くします。」「お話しすることは他言無用でお願いします。もし話が広まればルマールは危険にさらされます。」
「分かりました。アニタもいいわね。」「はい。」
カールハインツは深呼吸をすると話し始める。
「聖剣を知っていますか。」「以前勇者が使っていたそうですね。」
「その後どうなったか知っていますか。」「勇者は王都で余生を送りましたから、王都にあるのではないのですか。」
「いいえ、ルマール男爵領のある村の中に隠されています。」「村人は知っているのですか。」
「知りません。知っているのはルマール家の者だけです。」「魔族は知らないのですよね。」
「知っていればルマールは戦場になっているでしょう。」「では、なぜ魔族は村を襲うのですか。」
「私の想像ですが、魔族はどこかの村に聖剣が隠されていると考えていると思います。」「まさか、ブラバント男爵領の悲劇もそれで起こったのですか。」
「そうだと思います。魔族は村々に探りを入れてこれだと思う村を襲っているのだと思います。」「ルマールでは氷獄のエスエと配下のアベルが倒されているので魔族が探りを入れているというわけですか。」
「恐らくそうでしょう。」「これはきりがありませんね。聖剣を処分してはどうでしょう。」
「何を言うのですか。」「勇者様の剣ですよ。守らないでどうするのですか。」
「聖剣には特別な力があるのですか。」「分かりません。しかし、魔王を切った剣です。」
俺は聖剣を守ることに疑問を感じる。女神テイアに聞いてみることにする。
(テイア様、聖剣は何か特別な力があるのですか。)(ないわよ。それよりちゃんとやっているのでしょうね。)
(宮廷魔法士になっていますよ。)(ならいいわ。)
(よくありません。今、聖剣を守ることになっているんですよ。)(頑張ってね。)
(こら。聖剣のために魔族と戦うんだぞ。)(怒ってもしょうがないでしょ。聖剣は守ってもらわなければならないわ。)
(ただの剣でしょ。)(業物よ。それに勇者の象徴なんだから。)
(へぇ~、聖剣持ったら勇者らしくなるんだ。)(あの勇者、聖剣を使いこなせないと思うけど。)
(ちょっと待て!使えないだって~)(あなたのそばに勇者の指導をしてくれる人がいるでしょ。)
(その勇者、役に立つんだよな。)(まあ、決まっているし、それなりかな?)
俺はだんだん不安になって来るし、頭痛もしてくる。アニタが俺の顔を覗き込んで言う。
「アニエス様、大丈夫ですか。」「考え事かな。」
「カールハインツ様、魔族の動向調査を頑張ることにします。」「成果を期待しているよ。」
俺とアニタはルマール男爵邸から宿に戻る。宿には「アニエス様をあがめ隊」の面々がいる。宿を俺たちのいる宿に変えたらしい。アヒムが俺たちに言う。
「アニエス様、何かわかりましたか。」「ええ、でも話すことはできません。」
「分かりました。」「知りたくないのですか。」
「俺らはアニエス様について行くだけです。」「ありがとうございます。」
う~ん、アヒムたちが元野盗とは思えないくらい頼もしい。
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