　宮廷魔法士の採用試験までボドリヤール伯の街で過ごすことにする。ダリミルとの早朝の稽古はベンたちを相手に続けられていた。俺とアニタも久しぶりに稽古に参加する。

　俺よりベンたちの方が拳法の腕は上達してしまっている。ベンはアニタと組手をしている。俺はパウラと稽古をする。相変わらず基本の訓練である。

　ダリミルは元弟子のチェスが犯罪を犯したことで落ち込んでいたが元気を取り戻しているようだ。

　アニタが９歳の誕生日を迎える。ボドリヤール家は彼女を家族の一員として祝った。そして、俺も８歳の誕生日が来る。この日は町全体がお祭り状態になる。

　俺の両親は、俺の街での親しい人々を招いて、庭で誕生日パーティーを開く。この様なことをする貴族は我が家だけだろう。

　この中で「アニエス様をあがめ隊」の面々は目立っていた。彼らの人相が悪すぎるのである。

　夏の終わりにアネットから手紙が届く。彼女は近衛隊の魔法士にと誘いを受けたそうだ。だが、彼女は断っている。

　アネットに断られたためかもしれないが、俺に近衛隊の魔法士の話が来る。しかし、父ジルベールが速攻で断ってしまった。彼は俺にこのままそばにいて欲しいのである。

　しかし、いつまでもそばにはいられない。秋になり、俺とアニタは王都に旅立つことになる。ジルベールが言う。

　「宮廷魔法士などにならなくていいんだよ。不採用になったらすぐに帰っておいで。」「私は受かりますから大丈夫です。」「私が大丈夫ではないよ。」

ジルベールは俺が宮廷魔法士に採用されないことを願っていた。

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