第4章 宮廷魔法士

第1話 帰宅

 俺たちはボドリヤール伯領に入る。通る村々では歓迎される。すでに氷獄のエスエを倒したことが知れ渡っているようだ。

 街に着くと門の衛兵が俺たちに言う。

 「アニエス様、アネット様、アニタ嬢、活躍ご苦労様です。」「ありがとうございます。誰に聞いたのですか。」

 「ジルベール様や騎士団長やアニエス様に親しい方々が触れ回っています。」「そうですか。」

俺は、父と母、アルベルト、ベルントの顔を思い出す。馬車が門をくぐると道には人があふれている。みんな笑顔だ。

 俺は馬車の中から手を振る。アネットとアニタも俺に習って手を振る。屋敷に着くと門の向こう側に両親の姿がある。門から知らせが来たのだろう。

 俺たちは馬車から降りて門を入ると父のジルベールが俺を抱きしめる。

 「氷獄のエスエと戦うと聞いた時には、心臓が飛び出るかと思ったぞ。」「心配かけてすみません。」

 「いいや、エスエを倒してしまうとはボドリヤール家の誉れだよ。アニタもよくやってくれた。君もボドリヤール家の誇りだ。」「ありがたきお言葉、謹んでお受けします。」

 「アネット嬢もよくやってくれました。」「ありがとうございます。アニーの働きがあったからですわ。」

 「あなた、お話は中でしましょう。」「そうだな。リュシー。」

俺たちは、両親にルマール男爵領の出来事を夜まで話す。俺が部屋に戻るとアニタとアネットが入って来る。アネットが言う。

 「アニーとアニタは街の英雄ね。」「ネティーも自分の街に帰れば英雄扱いされるわよ。」

 「アニー、宮廷魔法士の採用試験のこと忘れてないわよね。」「忘れていないわよ。一緒に宮廷魔法士になるわよ。」

アニタが俺に言う。

 「アニエス様が宮廷魔法士になったら、私はどうなるのですか。」「あなたは私の従者よ。他にやりたいことでもあるの?」

 「いいえ、ずっとアニエス様の従者でいます。」「ありがとう。」

翌日、俺は、アニタとアネットと一緒に商人ギルドのアルベルトとランベルズ商会のベルントを訪問する。彼らには俺がいなくなるボドリヤール伯領を守ってもらわなければならない。

 その後、「アニエス様の瞳」のベンたちに会う。彼らには街の犯罪の相談は父のジルベールに相談するように頼む。その後も行く先々で俺とアニタは声をかけられる。

 アネットが感心して言う。

 「アニーは街の人々に親しまれているのね。うらやましいわ。」「これは、私のやり方だから貴族らしくないでしょ。」

 「でも、アニーのやり方は素敵よ。」「ありがとう。」

次の朝、アネットは自宅であるモンレルラン伯爵領に帰って行く。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る