第25話 勝利の余韻
俺は気を失いかけたが、何とか正気を保っている。だが、全身が痛みに包まれている。
(あんた、起きているでしょうね。)(このがんばっている姿分からないのか。)
(アベルはあなたたちを仕留めるつもりで魔力を使ったから消耗しているわ。)(こちらもボロボロですよ。)
(とどめを刺すなら今しかないわ。)
女神テイアは、この状況で無理を言う。俺は痛みのためか体が動かない。でもやるしかない。
俺は集中して、ファイヤーボールを作り、アベルに撃ち込む。彼はファイヤーボールを避けて後退する。あのアベルがファイヤーボールを避けたのだ。魔力を多量に消耗したに違いない。
「アニター」
俺は力を振り絞って叫ぶ。アベルに向かって白い影が突っ込んで行く。アヒムがディルクに言う。
「アニエス様のケガがひどいヒールしてくれ。」「アニー、あとは任せて。」
アネットが俺に言うとファイアーランスをアベルに向かって撃ち込む。どうも俺のケガが一番ひどいようだ。
アベルはファイアーランスを2本避けるが残りの1本を避けられず、腹に撃ち込まれる。そこへアニタが剣で首をはねる。はねられた首がしゃべる。
「人間ごときがつけあがるなよ。」「黙れ、アニエス様の敵だ。」
アニタがはねた首をさらに切ろうとする。すると後ろから首を絞められる。首のないアベルの体が両手でアニタの首を絞める。
アヒムがアベルの両腕を切り落として、アニタも首から手を引きはがす。はねられた首はアネットがファイアーランスを撃ち込み、炎で焼き尽くす。
するとアベルの体は糸が切れたように倒れて動かなくなる。そして、アベルの魔力は感じられなくなる。
俺の状態は、左腕がちぎれかけ、全身に切り傷がある。当然、左腕は動かないし感覚もない。俺は最後までウインドシールドを維持していたため伏せることに遅れて爆風を受けてしまったのだ。
失血死してもおかしくない状態だったが、腕の良いヒーラー、ディルクのおかげで俺は助かり、左腕も元通りになる。
俺たちは無事に町へ帰り、ギルドで氷獄のエスエの配下の魔族アベルを倒したことを報告する。デリアは話を聞いて喜びそうだが暗い顔をしている。
デリアは俺たちに言う。
「ローム村に氷獄のエスエが出たわ。村にCランク冒険者のパーティーが2ついたのだけど1人を残して全滅したわ。」
生き残った冒険者はメッセンジャーとして見逃されたらしい。俺たちはさらに強力な魔族の出現に勝利の余韻は吹き飛ぶ。
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