第23話 魔族アベル

 俺とアネットの張ったウインドシールドは、魔力の波動から俺たちを守る。俺がみんなに言う。

 「攻撃されているわ。強力な魔力よ。」「アニエス様、アネット様、防御に集中してくれ。エック、エマ、ヨーゼフは探知魔法を・・・」

アヒムが素早く指示する。エック、エマ、ヨーゼフは森の中に巨大な魔力を持った存在を探知する。エックがアヒムに言う。

 「森の中だ。おそらく魔族だ。強力だぞ。」「よし、エック、エマ、ヨーゼフ、ディルクは攻撃がやんだら森の中に攻撃魔法を撃ちこんでくれ。」「了解。」

俺は巨大なファイヤーボールを作りだし、魔力の波動が収まる時を待つ。そして、波動が消え、ウインドシールドを解除すると同時にファイヤーボールを森に打ち込む。

 続いて、エック、エマ、ヨーゼフ、ディルクがファイヤーボールを撃つ。森が燃え出すが魔力を持った存在は健在だ。それはだんだん俺たちに近づいて来る。

 俺たちはファイヤーボールを撃ち続けるがそれの歩みを止めることが出来ない。とうとう、それが俺たちの前に立つ。それはやせた背の高い男に見えるが明らかに人間ではない。

 全身を赤い衣装をまとっている。肌は青白く薄笑いを浮かべた顔をしているが赤い瞳は何の感情も映し出していない。それは片足を引いてお辞儀をして言う。

 「私はエスエ様の片腕ベアル。私の魔物たちを倒し、私の攻撃を防ぐとは感服しました。コロール村の魔物を倒したのもあなたたちでしょうか。」「だとしたらどうする。」

 「私としては素晴らしいの一言に尽きますが、エスエ様の邪魔をするのは良くありません。」「私、エスエを倒したいのだけれども、案内していただけます。」

 「残念です。あなた方は私が殺しますから、エスエ様の所へはいけません。」

ベアルが話し終えると同時にアネットが仕掛ける「我を遮るものを砕き穿て。パイルサイクロン」

 パイルサイクロンはベアルを直撃する。強力な風の渦がベアルを引き裂く。アネットが言う。

 「油断しているからこうなるのよ。」

しかし、ベアルは次の瞬間、元通り再生する。俺はファイヤーボールを上空いっぱいに作り続けて、ベアルに撃ち込む。エック、エマ、ヨーゼフ、ディルクもファイヤーボールを撃ち続ける。

 ベアルはファイヤーボールの飽和攻撃に反撃の機会を掴めない。アネットは再びパイルサイクロンを撃つ。ベアルは引き裂かれるが、すぐに再生する。俺はアネットに言う。

 「パイルサイクロンは魔力消費が大きいわ。ファイヤーボールに切り替えて。」「でも、あいつに効いていないよ。」

 「魔力切れを起こしたら私たち殺されるわよ。」「分かったわ。私はあいつの攻撃に備えるわ。」

アベルは、薄笑いを浮かべた顔のままだが、赤い瞳に苛立ちの色を浮かべて言う。

 「この攻撃には、飽きてきましたよ。他に芸は無いのですか。」

俺たちは無視してファイヤーボールを撃ちこみ続ける。

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