第19話 氷獄のエスエ

 俺たちは街に戻ると冒険者ギルドに集まる。コロール村の生存者は2人だけで村の魔物を退治した報酬は期待できない。俺たちは魔石を換金して平等に分ける。

 アヒムが代表でギルドマスターのカスパーに報告する。

 「俺たちが村に着いた時には手遅れでした。魔物は、ワーウルフ15匹、シルバーグリズリー10匹、魔物化したホーンボーア5匹でした。」「よく犠牲を出さずに退治してくれました。ありがとうございます。」

 「礼は、アニエス様とアネット様に言ってください。彼女らがパイルサイクロンで半数の魔物を初めに倒してくれたんです。」「そうですか。」

 「おそらく魔物たちは次の村を襲うつもりだったようです。」「魔族に操られていますか。」

 「私はそう考えます。次はもっと大群で襲って来るでしょう。」「私は、獣を魔物化する手口を使う魔族に心当たりがあります。」

 「厄介な相手ですか。」「氷獄のエスエです。私のいたエルフの村はエスエに滅ぼされました。その時、魔物化したグレーグリズリーとホーンボーアの群れに襲われました。」

 「エルフの村なら魔法士が大勢いるでしょう。」「私たちはエスエと対峙しましたが仲間は極寒の魔法で氷柱にされて砕かれました。」

 「7大魔族の1人ですよね。」「そうです。我々も奴の軍団にダメージを与えましたので、エスエは侵攻をやめたのです。」

 「奴が力を蓄えたということですか。」「すでに100年近く経っています。十分時間はあるでしょう。」

 「この話はみんなにしてもよろしいですか。」「お願いします。間違っていれば良いのですが。」

ギルドマスターの執務室から戻ったアヒムはみんなに言う。

 「今回の魔物の襲撃は魔族が操っている可能性が高い。そして魔族は氷獄のエスエだ。」

アヒムの言葉にみんな言葉を失う。俺は7大魔族の1人と戦うチャンスが来たと考える。

 「上等な獲物ですね。どう戦いますか。」「アニエス様、情報がありません。まずは魔物の群れを見つけることが大切だと思います。」

Cランク冒険者の1人が言う。

 「7大魔族の1人となんか戦えるかよ。逃げるなら今だぞ。」「逃げるのはあなたの自由ですわ。」

俺が言うと彼は俺を睨んで言う。

 「子供には分からないんだよ。どうにもならない化け物はいるんだ。」「怖いなら、邪魔だからさっさと出ていけと言っているのよ。」

 「なにー、バカにしやがって。皆行くぞ。」

彼のいたパーティーが出ていく。他の者たちは踏みとどまっている。俺は、俺たち3人と「アニエス様をあがめ隊」しか残らないと思っていたが意外と根性があるようだ。

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