第3話 リッシュ子爵邸

 俺たちはやどを出るとリッシュ子爵邸に馬車で行く。門の前に馬車を止めて、馬車から降りる。門には門番はいない。そのまま入って玄関まで行く。

 玄関ドアをノックすると執事がドアを開ける。彼が俺たちに言う。

 「アネット様、アニエス様、アニタ様、主人が広間で待っています。こちらへどうぞ。」

執事は俺たちを広間まで案内すると

 「アネット様、アニエス様、アニタ様、ご到着されました。」「お待ちしていました。ゲレオン・ド・リッシュです。」

 「急なお招きのため、夜分になってしまいました。申し訳ありません。」

アネットが嫌味を言う。

 「いえ、あなた方が街に入られてのは分かっていたのですが居所を探すために時間がかかってしまいました。こちらこそ申し訳ありません。」

彼は街に入った俺たちを探して招待したのだ。伯爵の令嬢相手にそこまでするだろうか。

 「どうして、私たちを探してまで招待したのですか。」「アネット様とアニエス様は上級魔法士に合格されたと聞いています。また、天使と悪魔の噂は耳に入っていますので、ぜひ会いたかったのです。」

俺は屋敷を探知するが罠のようなものは仕掛けられていない。さらにスィープ・サーチをかけて建物を調べるが2階建ての仕掛けの無い屋敷である。

 変わった所と言えば壁が厚いところがあるくらいだ。ちなみに詠唱は「闇を白日にさらせ。スィープ・サーチ」である。

 「分かりました。私たちは食事を終えて寝る所でしたので休ませていただきたいのですが。」「それでは、私の面目が立ちません。軽食を食べながら歓談をお願いします。」

使用人がデザートと飲み物を持ってくる。テーブルに並べられるとアニタが匂いを嗅いで確かめる。

 「アニエス様、食べ物と飲み物には異臭はありません。」「ありがとう。」

 「アニタ様、おかしなものは入っていませんよ。」「ゲレオン様、アニタは従者ですのでそのように対応願います。」

 「いえ、白い悪魔とまで言われるアニタ様は私の客人です。それに美しい。」「ありがとうございます。」

アニタは礼を言うが嬉しそうではない。俺たちは食べ物と飲み物に警戒したが薬などは入っていなかった。

 食後、俺たちは2階の客室に案内される。アネットとアニタは俺の部屋に来る。俺は部屋にカギをかけウインドシールドで部屋を包んで音が漏れないようにする。

 「アニー、どう思う。」「ゲレオンの私を見る目がきもかったわ。」

 「確かに何考えているかわからないわね。」「今日は3人一緒に寝ましょう。」

 「私は大丈夫よ。アニー、気を付けてね。」「ネティーもね。」

俺はアニタと寝ることにする。ドアのカギをかけて探知の魔法をかけておく。そして無事に朝を迎えるが俺とアニタはドアのノックで起こされる。

 ドアを開けるとアネットの御者が青い顔をして立っている。

 「アネット様がいなくなりました。」「どういうこと。」

 「私はアネット様に朝早くに起こすように頼まれていたのですが部屋のカギをかけたままいなくなりました。」「他に誰か知っている。」

 「ゲレオン様と執事もカギを開けてもらったので知っています。」

アネットはカギのかかった部屋から消えたことになる。窓から抜け出したのだろうか。俺はアネットの部屋を調べることにする。

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