第4話 リミッター解除

 俺はアネットの部屋を見る。出入りができるのはドアを除けば窓だけである。窓にはカギがかかっている。御者に聞く。

 「窓は誰か触りましたか。」「いいえ、私が部屋に入った時には誰も触っていません。」

部屋には隠し通路があるかもしれない。俺はスィープ・サーチで部屋を調べるが窓側の壁が異様に厚いだけで空間は検知できない。俺はアニタに聞く。

 「アニタどう思う。」「この館の者なら合鍵が手に入りますから連れ去ることが出来ます。」

アネットがドアから入って来たものに易々と連れていかれるだろうか。彼女はドアに検知の魔法をかけていたはずである。

 「アニエス様、魔法の検知でこの部屋に異常はないのですか。」「窓側の壁が厚いけど空間は無いわ。」

アニタは壁を叩く。そして俺に聞く。

 「壁は空間が無いのですね。」「ええ、レンガでできていると思うわ。」

 「私には壁が薄く感じます。」「どういうこと。」

アニタは右こぶしにハンカチを巻くと思いっきり壁を殴る。トラの獣人のこぶしだ。ましてやアニタは拳法を習っている。こぶしの威力は凄まじいはずである。

 壁が大きくへこむ。俺は中のレンガが砕けたかと思った。アニタが言う。

 「この壁、中が空洞です。」「私が魔法に頼って見落としていたのね。」

 「奴隷商の倉庫の時と同じではないでしょうか。」「やられたわね。」

おそらく隠し通路や隠し部屋は魔法を阻害する仕掛けが施されているのであろう。俺はいつも制限している魔力のリミッターを外す。

 そして、スィープ・サーチをかける。すると建物は外側の壁の中に通路らしき空間がある。さらに地下室が存在していた。俺は御者に指示する。

 「リッシュ子爵邸で伯爵令嬢がさらわれたと言って衛兵を呼んできて。」「はい、分かりました。」

俺とアニタは、ゲレオンに会いに行く。彼は言う。

 「アネット様の手掛かりはありましたか。」「ええ、ありましたわ。」

 「どんな手掛かりです。」

ゲレオンは余裕のある態度で言う。自分の屋敷で令嬢が消えたのに気にしていないようだ。余程、隠し地下室と隠し通路に自信があるのだろう。

 「地下室と隠し通路です。」「何を言っているのだ。この屋敷にはそのようなものは無いぞ。」

ゲレオンの顔が青くなる。俺は畳みかける。

 「地下室と言うより、巨大な地下牢獄かしら。」「アニエス様、いい加減にしてください。どこに証拠があるのですか。」

 「白を切るなら、穴を開けることになるけど良いのかしら。」「良いわけないだろ。」

ゲレオンが掴みかかって来る。アニタが素早く割り込んで彼を取り押さえる。執事がナイフを出してアニタに突進しようとする。俺はウォーターボールを執事にぶつけて失神させる。

 俺は地下を探知して人のいないところに立つ。そして詠唱を始める「我を遮るものを砕き穿て。パイルサイクロン」強烈な風の渦が巻き起こり、床を砕き床下の地面を張り下げ地下牢の天井をぶち破り、地下牢の床に大きな穴を開ける。

 パイルサイクロンは使う場所がないため、無詠唱で使えるほど練習できていない。パイルサイクロンは屋敷の中をめちゃくちゃに破壊して床に直径3メートル位の穴を開ける。

 俺はゲレオンに言う。

 「どお、あったでしょ。」「私の天国になんてことをするんだー」

 「何が天国よ。」「アニエス、お前を妻にするつもりだったんだぞ。」

ゲレオンの目が本気だと言っている。俺は寒気を感じる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る