第28話 魔法省へ行く

 翌朝、俺は起きるとアニタと朝食を食べてから魔法省に出かける。魔法省は王宮から離れたところにある。俺はなぜ魔法省が王宮から離れたところにあるのか知らなかった。

 魔法省のは周りを大きな通りに囲まれている。つまり、近くに建物が無いのだ。建物の入り口には誰も見張りがいない。不用心のようだが、建物の周りには検知の魔法が幾重にもかけられている。

 検知の魔法たちには、それぞれ検知対象が決まっているはずである。例えば、悪意のある者、武器を持つ者、魔法士などである。

 俺とアニタが歩いて入り口に近づくと、若い男が2人出てくる。俺は挨拶をする。

 「昨夜、ローズ・ド・ルマールに招待されたアニエス・ド・ボドリヤールとアニタ・パレスです。」「ローズ様のお客さまでしたか、強い魔力を検知したので殴り込みかと思ってしまいました。あはははー」

この2人は喧嘩をするために出てきたようだ。2人は言う。

 「アニエス嬢とアニタ嬢は美しい。俺たちと後で食事に行きませんか。」「すみません。魔法士の試験がありますので・・・」

 「なら、アニタ嬢だけでも一緒にどうですか。」「私は従者ですので行けません。」

 「そんなこといわずにどこの宿に泊まっているの。」

2人はめげないし粘り強そうだ。俺に男となれ合う趣味はない。

 「あんたたち何をしているの。」「ローズ様、これはアニエス嬢とアニタ嬢と親睦を深めようと・・・」

 「前にもしていたわよね。仕事はどうしたの。」「強い魔力反応があったから、殴り込みかと出てきたんです。」

 「あんたたちでかなうわけないでしょ。それにこれは受付の仕事よ。」「はい、仕事に戻ります。」

 「お姉様、あの人たちなんですか。」「気にしないで、事務職員よ。」

ここの事務は大丈夫か。俺たちはローズに中に招き入れられる。すると人が集まってくる。

 「彼女が無詠唱の魔法士か。かわいいな嫁にしてー」「天使と悪魔なんだろ、2人とも天使じゃないか。」

その時、手をたたく音がする。集まっていた人は名残惜しそうに仕事に戻って行く。代わりに中年の女性が近づいて来る。

 彼女は青いマントに白い制服を着ている。宮廷魔法士である。ローズが俺に紹介する。

 「宮廷魔法士長のリーザ様です。」「リーザ・フォン・グートハイルです。アニエス嬢、会いたかったわ。」

この人がエマール王国の魔法士の頂点に立つ人である。彼女が勇者召喚をするのだろうか。

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