第21話 誘拐犯の罠
ジニアス商会の倉庫に着く。案内してくれた少年には離れたところで見ているように指示する。
倉庫の扉には鍵がかかっていたのでウインドカッターでカギを切断する。そして、静かに扉を開く。
中は真っ暗だが灯りを灯すことはできない。俺は中に入ってしばらく待ち目を闇に慣れさせる。
すると檻が左右に並んでいることが判る。人の気配がするが檻に入っている人のものか監視役のものかわからない。
俺が倉庫の中央まで来ると火打石を打つ音がして灯りが灯る。その時、アニタの声がする。
「アニエス様、罠です。逃げてください。」
俺は、灯りに向かってウォーターボールを撃つ。しかし、ウォーターボールは不発に終わる。こんなことは初めてだ。
もう一度、ウォーターボールを発動させるができない。男が1人近づきながら言う。
「アニエス様、自慢の魔法はどうしましたか。」「・・・」
「随分おとなしいですね。もしかして魔法が使えませんか。」「罠にはめたのね。」
「ここは奴隷の倉庫ですよ。魔法防止の結界が張ってあるのですよ。」「勝ったつもりなの。」
「結界はアニエス様に合わせてて強化してあります。上級魔導士でも破るのに数分はかかりますよ。」
それならば破れないことはないわけだ。俺は集中して魔力を発動する。
「はああぁぁぁーーーー」
「何をしているアニエスを捕まえろ。傷をつけるんじゃないぞ。そいつはいくら値が付くかわからない極上品だからな。」「はい。ボス。」
男が俺の両肩を掴む。俺は魔法の発動をサンダーボルトに替えて集中する。
「はああぁぁぁぁぁぁーーーーーー」
突然、俺の肩を掴んでいた男が黒焦げになる。手は炭化するほどひどい有様だ。結界が敗れたのだ。ボスと呼ばれた男が言う。
「化け物だ。チェス、アニエスを捕らえろ。手荒でも構わん。報酬は10倍だ。」「アンス、忘れるなよ。」
チェスと呼ばれた男が走って向かってくる。俺はファイアーランスを10本撃つ。ファイアーランスは俺にコントロールされている。
しかし、チェスは10本全てをかわして見せる。そして、滑るように低い姿勢で俺に近づき、俺の腹を蹴る
俺は飛ばされ床を転がる。旗はとっさにウインドシールドで防いだのでダメージはない。俺は気絶した振りをしてチェスが俺を掴むまで待つ。
掴んでいればサンダーボルトで感電させてしまえばいい。チェスは俺に近づくと腹にけりを入れる。
「起きているんだろ。」
さらに腹にけりを入れる。アンスが叫ぶ。
「もうやめろ。死んでしまう。チェン、拘束しろ。」「ちっ、分かりました。」
チェンが俺の右腕を掴む俺はサンダーボルトでチェスを気絶させる。しかし、体が動かない。5歳児に二度もまともにけりを入れるとはとんでもない奴だ。
アンスが残りの男にわめく。
「お前、行ってアニエスを拘束してこい。」「いやですよ。死にたくありません。」
「報酬ははずむぞ。麻袋に入れるだけだ。直接触らなければ感電しないぞ。」「それならボスがやってください。」
アンスと男が言い争いをしていると騎士団が突入してくる。騎士団長が言う。
「全員動くな!アニタ・パレス誘拐の容疑で調べる。」「何かの間違いではありませんか。」
アンスが騎士団長に言う。
「お前は誰だ。」「ジニアス商会のアンス・ジニアスです。」
「団長。」「アニエス様が倒れています。」「何。」
「他に男1人が倒れて、黒焦げの死体が転がっています。これはひどい。」
「アンス。お前の仕業か。」「いいえ、あの倒れている娘が入ってきて暴れたんです。死体と倒れている男は店員です。」
アンスは逃れようと言い訳をする。
「団長、アニタを発見しました。」「アンス、これはどういうことだ。」
「間違いです。あの奴隷はアニタなどではありません。奴隷の足かせがあるでしょ。」「いい加減にしろ!団員は全員アニタの友だ。間違えるわけがない。」
俺は騎士団員に支えられて騎士団長の前に出る。
「このアンスと言う男が指示をして少女たちを誘拐していました。」「何を言う。小娘。」
「私のことをいくら値が付くかわからない極上品と言っていました。」「嘘です。この娘は狂っている。」
「不敬だぞ、アニエス様は5歳と思えない聡明な方だ。お前の言い訳は聞き飽きたわ。」
騎士団によって、アニタとパウラ、他に少女2名が助け出される。アンスたちは身柄を拘束される。
俺は腹の打撲がひどく内臓がやられている恐れがあるため、街一番のヒーラーが呼ばれる。ヒーラーは「アニエス様をあがめ隊」のディルクだった。
彼はこわもてなのに優秀なヒーラーらしい。そして、彼は俺を助けることが出来たことを女神様に感謝していた。
そして俺は思い出す。女神テイアによって常人の10倍の魔力を持っていたのだ。制御を外すだけで結界は破れたのだ。
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