第19話 攫われる

 ベンたちの店は順調である。俺は今、ベンたちに調査を依頼していない。それは、彼らに頼める事件が無いからだ。決して街から犯罪が消えたわけではない。

 ある日、ベンの仲間の少女が材料の追加に出かけたまま帰って来なくなる。ベンたちは少女を探すとともに俺の屋敷に助けを求めに来る。

 ベンは門番に俺に会いたいと言うが、門番は取り合わない。ベンは大声で俺とアニタの名を叫ぶ。

 とうとう門番は実力行使に出る。ベンは殴られ倒れるが一歩も引こうとはしない。そこへ父が帰って来る。

 「どうした。騒がしいぞ。」「いえ、このガキがお嬢様に会わせろと言って粘っているんです。」

 「何、少年、アニエスとはどんな関係だ。」「お父さんですか。」

 「お前にお義父さんと呼ばれる気は無いぞ。」「俺はアニエス様に助けていただいた者です。」

 「それが何の用事だ。」「仲間が攫われました。アニエス様の助けが欲しいのです。」

 「少年を騎士団まで連れて行ってやれ。」「はい。分かりました。」

 「俺はアニエス様に助けて欲しい。会わせてくれ。」「アニエスはまだ5歳だ。危ないことはさせられない。」

ベンは門番に騎士団の所まで連れられて行く。ベンは仕方なく騎士団に事情を説明する。

 父は屋敷に入ると俺が出迎える。

 「アニー、門に少年が来ていたぞ。」「少年は私に用事があったのではないですか。」

 「大丈夫だ。騎士団の所へ連れていたよ。」「お父様、私の客ですよ。」

 「平民の少年が訪ねてきたからって、いちいち会うのか。」「彼は私の仲間です。アニタ出かけるわよ。」

 「アニー、どこへ行くつもりだ。」「騎士団に行ってきます。」

 「よしなさい。」「お父様、嫌いになりますよ。」「アニー、話し合おう。」

俺は父を置いてアニタと騎士団へ向かう。騎士団の詰め所に行くとベンがいた。彼は俺に気づくと泣き出しながら言う。

 「アニエス様、パウラが攫われました。」「街で少女をさらっている連中ね。」

 「おそらく、1人で追加の材料を仕入れに出かけたんです。」「やられたわね。」

俺はベンたちから、街の少女を攫う連中がいることを知っていたが、ベンたちに危険が及ぶので調査をしなかったのだ。

 ベンが騎士団員から聴取されるのを待って、俺とアニタはベンと店に行く。店には仲間たちが帰ってきていた。

 パウラを早く見つけないとどうなるかわからないので、俺たちはこれまでの情報を元に作戦を立てる。

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