第18話 お好み焼き

 ベンたちは朝から店を始める。通りかかった中年の男が声をかける。

 「ベン、店を始めたのか。」「アニエス様のおかげで店を出せたよ。」

 「何を焼いているんだ。」「お好み焼きだよ。おいしいよ。」

 「朝飯まだだから1つくれよ。」「毎度、銅貨3枚です。」

 「安いな。」「気に入ったらまた食べてくれよ。」

そうすると次に客が来る。ベンたちの店は順調に始まる。

 彼らは、情報収集をする中で街の人に溶け込んでいたため、差別されずに店を始められた。

 「ベン、2つづつくれ。」「焼いていますから、しばらくお待ちください。」

 「「アニエス様の瞳」が店やってていいのか。」「アヒムさん、アニエス様が店を出すことを手伝ってくれたんです。」

 「さすがアニエス様、天使だな。」「天使ですねー」

10人組の男たち「アニエス様をあがめ隊」とベンは遠い目をして言う。

 店は午前中途切れることなく客がやって来る。少年たちは交代しながらお好み焼きを焼く。

 昼にアルベルトが顔を出す。

 「店はどうかな。」「繁盛してます。」

 「私にも1つくれ。」「どうぞ。」

 「銅貨3枚だったな。」「結構です。お世話になったからサービスします。」

 「子供が遠慮するな。当然の対価だ。」「では、いただきます。」

 「これはうまいな。」「ありがとうございます。」

アルベルトにつられて客がやって来る。

 午後になり、俺はアニタとベンたちの様子を物陰から見に行く。店には絶え間なく客が来ている。成功しているようだ。

 材料が足りなくなってきたのか途中で材料を買いに走っている。

 夕方になり、俺たちは店に顔を出す。ベンたちの顔は満足げである。

 「アニエス様、アニタ様ありがとうございます。」「私たちはコネを使っただけよ。」

 「いいえ、お好み焼きのアイデアはアニエス様のものです。」「それは、まあ思い付きだから。」

ベンたちに前世の記憶と言っても通じないだろう。これでベンたちも自分の足で歩いて行けるに違いない。

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