第25話 優勝の褒美

 俺が観客席に戻るとローズが抱きしめてくれる。大して頑張っていないが優勝したのでこのくらいの役得はいいだろう。彼女は俺に言う。

 「何であんな戦い方をしたの。魔力切れになったらどうするつもり。」「私は、まだまだ余裕がありますよ。」

 「あなたの魔力量は私より少ないはずなのにおかしいわね。」「きっと魔力の消費が小さかったのですわ。」

ローズが詠唱を始める「霧を晴らして真の姿を示せ。キャリブレイト」そして俺を見る。

 「おかしいわね。あれだけ戦った後なのに魔力を消耗していないわ。」

俺は何か言い訳を考えるが思いうかばない。それに魔力を消費すると魔力量が小さくなるなんて初めて聞いたのだ。女神テイアに聞くことにする。

 (テイア様、俺の魔力量が減らないんですがどうしてですか。)(あなた、ずうっと魔力を抑えているでしょ。)

 (そう言えば、そうですね。)(忘れていたの。)

 (普段、意識していないんで・・・)(忘れていたのね。あなたの魔力はもっと大きいのよ。少しくらい使ったからと言って、魔力を抑えている状態で減って見えるわけないでしょ。)

これは困った。ローズに本当のことを言うわけにはいかない。俺は話をそらすことにする。

 「お姉さま、優勝したから、ご褒美が欲しいです。」「何か欲しいものがあるの?」

 「いいえ、街の中をお姉さまとデートしたいです。」「伯爵令嬢なんだから街中を軽々しく出歩くものではないわ。」

 「私は街に興味があります。お願い、お姉さま。」「困った子ね。内緒よ。」

やった。話をそらした上に、美少女とのデートの約束だ。俺は優勝したことより、こちらの方がうれしい。

 中級魔法士の資格の免状がもらえるのに1週間位かかるらしい。この間、俺はローズとデートをして過ごすことを画策する。

 翌日の午前、俺とローズはデートに出かける。はたから見ると姉妹の散歩に見えるだろうが、断じてデートである。

 俺たちは表通りを歩く。裏通りは治安が良くないらしいので仕方がない。しばらく歩くとしゃれた喫茶店を見つけたので店の中に入る。

 俺とローズは紅茶を頼む。ローズは紅茶にミルクを入れて飲む、俺はそのまま飲む。

 「アニーは紅茶に何も入れないのね。」「はい、この方が好きです。」

 「5歳とは思えないわ。子供なら砂糖とか入れそうよね。」「私は紅茶は甘いのが苦手です。」

 「じゃあ、ケーキはいらないわね。」「ケーキは別です。」

ローズはモンブランを2個注文する。ローズと食べるモンブランはおいしかった。

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