第21話 中級魔法士の実技試験

 俺とローズは早めに食堂へ行って昼食を食べる。筆記試験の結果は採点が終わり次第、先の教室前の廊下に張り出される。

 ローズは俺に実技試験について説明する。

 「採点項目は正確さと威力よ。試験官が指定した魔法を的に向けて撃つのよ。指定する魔法は基本的なものだから心配いらないわ。」「はい、お姉さま。無詠唱でもいいですか。」

 「採点項目にはないけど、試験官を驚かせてあげなさい。」「分かりました。」

俺は無詠唱で実技試験を受けることにする。食事が終わると廊下に戻る。他の受験者も合否の発表を待っている。俺は暇なのでキャリブレイトで受験者の魔力を見る。

 ほとんどが紫系の色で人並みである。その中で女子に1人、ローズ並みに魔力の大きい受験者がいた。他には男子に1人赤みがかった紫の受験者がいる。

 しばらくして筆記試験の合格者が張り出される。合格者は33人である。俺は100点で合格である。100点は他に4人いる。ローズが俺に言う。

 「これは1位で合格しそうね。」「まだわかりませんよ。女子にローズ並みの魔力の持ち主がいます。」

 「でも、私が教えたんだからアニーが勝つわよ。」

ローズは俺を抱きしめる。う~ん、ご褒美だ。この後、魔法訓練場に移動する。魔法訓練場は立派なつくりである。訓練場そのものは直径300メートル位の円形で、周囲をスタンドになった観客席がある。

 実技試験は1人づつ行い。試験官が指定した魔法を50メートル先の的に当てるもので2つの魔法が指定される。

 1人目の受験者が呼び出される。どうも筆記の合格点が低かったものから採点されるようだ。

 試験官がウオーターボールを指定する。受験者は詠唱を始める「命のしずくよ、集まって形を成せ。ウオーターボール」水の玉が的へめがけて飛んでいき、的に当たりはじける。

 次に試験官はファイヤーボールを指定する。受験者は詠唱する「熱き力よ、集いて形を成せ。ファイヤーボール」火の玉が的めがけて飛んでいくが、的の手前で霧散する。

 受験者は残り5人になる。全員が筆記試験が満点だ。

 これまで試験官はウオーターボールとファイヤーボールを出題している。

 次の受験者もウオーターボールを的にぶつけ、ファイヤーボールも的にぶつけて終わる。

 次にポール・トレイユと名前が呼ばれる。俺がキャリブレイトで見て赤紫だった男子だ。

 彼はウオーターボールを撃つと的に「トン」と音を立てて当たる。これまでの受験者と違って威力がある。

 試験官はウインドカッターを指定する。彼は詠唱する「風よ、刃となって立ちふさがるものを切り裂け。ウィンドカッター」風の刃が的を切り裂く。

 的は取り換えられて試験は続く。俺はローズ並みに魔力のある女子に注目している。とうとう残りは俺と彼女になる。

 アネット・フォン・モンレルランと彼女が呼ばれる。彼女がウオーターボールを撃つと的に「ドン」と音を立てて当たる。かなりの威力がある。

 試験官はファイヤーランスを指定する。彼女が詠唱する「熱き血を力に変えて、立ちふさがるものを貫け。ファイヤーランス」炎の槍が的を貫き。的は焼け落ちる。

 俺は彼女が魔法の発動と固定を完全に行っていると考える。かなりの腕前である。

 最後に俺が呼ばれる。試験官はウオーターボールを指示する。俺は無詠唱でウオーターボールを飛ばす。水の玉は的を破壊する。

 無詠唱の魔法に試験会場がざわつく。試験官の顔が厳しくなる。試験官は俺がずるをしていると思っているのだろうか。

 次に試験官はファイヤーランスを5本同時に的に当てることを指示する。俺は無詠唱でファイヤーランスを5本作り、的へ飛ばす。

 5本のファイヤーランスは的をばらばらに砕き燃やし尽くす。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る