　俺とローズは冒険者ギルドを出ると王都にいる間に泊まる宿を探しに行く。移動は馬車である。俺は王都の中を歩きたいが貴族の令嬢が徒歩と言うわけにもいかない。

　街は昼近くになり、にぎわっている。俺は馬車から外を見ながらローズに聞く。

　「お姉さま、王都は治安がいいのですか。」「場所によるわ。西の区域は貧民街で危険ですし、裏道の人目につかないところは危険よ。」

　「表通りは比較的安全なんですね。」「アニー、１人歩きは危険よ。」「分かっていますわ。」

俺は試験が終わったら中級魔法士の免状をもらうまでの間に街に出てみようと思う。

　宿はローズが決めていたため、すぐに決まる。この宿はローズが魔法士の試験のために使っていた宿だ。

　宿が決まると俺たちは昼食を食べに近くのレストランに行く。昨日の宿の食堂と違って調度品がしゃれており、客も品が良い。

　こういう店は値段が高いのだろうと思う。しかし、ローズにとってこういう店が普通なのだろう。ローズは俺に言う。

　「午後は旅の疲れがあるからのんびりしましょう。明日は試験に備えて復習しますよ。」「はい、お姉さま。」

　「とは言っても、アニーの魔法技術は上級魔法士並みだから筆記試験だけね。」「筆記も大丈夫ですよ。」

　「緊張して実力が出せなかったらまずいでしょ。満点を目指していくわよ。」「お姉さま、力が入っていますね。」

　「それは、天才魔法士の弟子が試験を受けると話題になっているのよ。」「天才と言われていたんですね。」

　「あなたと比べると凡人なんだけどね。」「天才魔法士は私が引き継ぎます。」

中級魔法士の試験は明後日行われる。午前中に筆記試験が行われて午後から実技試験を受ける。

　合否の発表は翌日に行われ、それから合格者で勝ち抜き戦が行われる。合格の順位は試験の成績で決まるが勝ち抜き戦の勝者が実力者となり金バッチが送られるのである。

　ちなみにローズは、中級魔法士の試験と上級魔法士の試験の金バッチを持っている。

　昼食の後、宿に戻りのんびりと過ごす。俺はこうやってダラダラ過ごすのもありだと思っている。勇者の件が片付いたらのんびり過ごすのも悪くはない。

　翌日、俺は宿にこもってローズと試験の準備をする。と言っても習ったことを軽く流すだけである。これで明日いよいよ試験が始まる。

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