第3話 本を読もう

 俺は2歳になり言葉を話すようになった振りをしている。本当はしゃべれるのだが「ママ、おはよ。」と言うような言葉に留めている。

 俺はあくまで普通の天才魔法少女なのである。もう文字も覚えてきている。

 この国はエマール王国でラカルト語を使っている。人間社会はラカルト語圏とラフォン語圏に分かれている。

 俺はラフォン語もいずれ覚えることにしている。この世界には子供が読むような絵本はない。と言うより本は貴重らしい。

 幸い伯爵家に生まれたので家の中に書庫がある。俺は書庫に忍び込んでは本を読んでる。

 読めない言葉は女神テイアに聞けばいい。

 俺の名前はアニエス・ド・ボドリヤールと言い、長女である。兄弟はいない。

 「アニエス様、またこんなところで本を出して、まだ早いですわ。」

乳母クロエに見つかってしまった。彼女は俺から本を奪おうとする。

 「やーだー、本。」

俺は本を取られないように抵抗する。そこへ父親が通りかかる。

 「どうしたんだクロエ。」「アニエス様が書庫に入って旦那様の本を・・・」

 「これは、昔読んだ小説だな。アニーにあげるとしよう。」「アニエス様良かったですね。」

 「パパ、好き」「そーかー、アニー。好きな本を読んでいいぞ。」

どうやら父は親バカらしい。おかげで自由に本を読めることになる。

 俺は乳母のクロエに部屋へ連れ戻される。もちろん本は確保している。

 部屋に戻っても本を読み進める。読めない単語や意味の分からない文章は女神テイアに聞く。

 テイアには言葉に出さなくても心の中で呼びかけるだけで声が届く。非常に便利だ。

 まずは小説を2、3冊読んで語学力をつけてから魔導書に取り掛かるつもりだ。

 クロエが話しかけてくる。

 「アニエス様は本当に本がお好きですね。」「本、すーきー」

 「私が呼んで差し上げましょうか。」「いやー」

俺は拒否して本にかじりつく。クロエが独り言を言う。

 「アニエス様、もしかして文字を読めるのかしら。まさかねー。まだ2歳よ。」

クロエに俺が本を読めることを知られるのはまずい。本に落書きでもするかー。いや、せっかく手にした本を自由に読める権利を無くすかもしれない。本は大切に扱おう。

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