花ことば
@KisaragiRanka
三日月
私には丸眼鏡が良く似合う年上でウルフヘアの煙草を吸う彼女がいる。
いつものまじめで少しかっこいい顔も好きだが私は彼女の笑った時が好きだ。
はじけるような笑顔、いつものちょっと低めな声とは違う快活な笑い声。
それだけではなく私は彼女のすべてが好きだ。
私はいつか彼女と結婚しようと思っている。
でも勇気が出なくてなかなか言えないでいる。
でも本気で彼女を幸せにする自信はある。
こんな私でも。
勇気のない私でも。
私はまだ勇気が出ないが愛の告白の仕方はすでに決めている。
いつか彼女が言っていた。
「ボク、満月よりも三日月の方が好きだな。」と。
理由を聞くと想定外の答えが返ってきた。
「だって三日月ってまだ成長途中じゃん。ボクはその時が満月よりも輝いていると思う。君の名前と同じようにね。あと三日月って縁起のいい月だから好きだな。」
彼女は夜空に咲く花のようにはじける笑顔を見せ、珈琲を片手に言った。
「キミも珈琲いるだろ。淹れてあげよう。」と言って台所で珈琲を淹れる彼女を見て決めた。
私は彼女の好きな三日月の夜に、愛の告白をする。
いつか彼女が言っていた。
「猫、飼ってみたいな。」と。
私の実家でマンチカンという種類の猫を飼っている。
彼女が私の実家に遊びに来た時も猫とずっと戯れていた。
途中からどっちが猫か分からないほど燥いでいた。
私は以前、両親が「もう一匹飼おうかな。」と言っていたのを覚えていた。
なので両親に頼んで、私が愛の告白をするときに実家から猫を譲ってもらうことになった。
彼女とは『隠し事は無し』と約束したがこの隠し事は許してもらえる。と思う。
私は彼女が好きな猫と共に、愛の告白をする。
と思っていたのに彼女は事故に遭ってしまい亡くなった。突然。私に何も言わずに。
隠し事は無しと約束したのに私は。私は約束を守れなかった。彼女も守れなかった。
喪失感と自責の念に駆られている時に、彼女の母から遺言を聞かされた。
彼女は最後に「優輝、あいしているよ。」と。
もう彼女にこの気持ちを伝える事はできない。だが想いは伝わる。
骨と化した彼女の前に紫の桔梗と九本の橙の薔薇を供え、
もっと早く言えば良かったと思いながら言った。
「紫音と、結婚したかった。ずっと。」と。
私は彼女の前で三日月の夜に、愛の告白をした。こんな私でも。
花ことば @KisaragiRanka
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます