第4話

 昌樹と私は幼馴染みたいなもので、小学生の頃からお互いを知っている。

 だけど最初から仲良かったわけじゃない。私は昌樹が嫌いだった。だっていつも意地悪ばっかりだったから。そして、大嫌いになった決定的な一言。


『サンタなんているわけねーだろ!』


 小学二年生の時だった。

 隣の席の男の子とクリスマスの話をしていて、私は『サンタさんに会いたいな』って話していた。

 その言葉を聞いていた昌樹が大きな声で否定したんだ。その言葉に昌樹の周りにいた他の子ものっかって、みんなで私の事をからかった。悲しくて、悔しくて。泣く事しか出来なくて。


 家に帰って涙のあとが見える私の顔を見て、お母さんはそっと抱きしめてくれた。そして魔法の言葉を教えてくれたんだ。


 それでもやっぱり、否定された言葉は胸に刺さって抜けなくて。お母さんの魔法の言葉も信じられなくなった。

 だから昌樹の事は許せなかった。顔を見たくないくらい大嫌いだった。


 そんな昌樹が「好きだ」と私に言ってきたのは、小学六年生の時。返事はもちろんノーに決まっている。

散々意地悪を言ってきた相手だ。それをゆるすどころか「好き」なんてありえない。


 それでも挫けなかった昌樹は、周りに冷やかされながらも諦めてくれなくて。やがて小学生時代とは違う優しさや不器用さが見えてくるようになった。

 休んだ日は家までプリントを届けにきたり、教科書忘れたら自分のを貸そうとしたり。同じクラスなんだから、私に貸したら自分が教科書ないのにね。


 これが恋だったのか、絆されたのか。

「好きだ」と言われ続けて、昌樹に応えたのは高校二年生の時だった。


 それから今に至れば、当時の昌樹については本人から何度も聞いている。好きだから、こっちを見て欲しくて意地悪を言ったんだと。

 今の私ならその気持ちもわからなくもない。だけど、当時の私が傷ついた事も事実なんだ。


 まさか碧が私と同じ事で傷つく日がくるとはね。

 でも、碧の場合は少し違う。


「碧は大丈夫。実は夕方にユキちゃんが来たの」

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