第44話 呪いの魔具
サミュエルに神水を作ってくれと言われ、アルビダは慌ててベッド横にのテーブルに用意してあったグラスに神水を作り出し注ぐ。
「サミュエル様、どうぞ!」
「ありがとうアルビダ嬢」
サミュエルはアルビダから受け取ったグラスを手に持ち、デービットの体を少し抱き抱えながら「デービット、この水を飲んでくれ」と言ってグラスを口に近付けた。
デービットは鬼気迫る勢いのサミュエルの姿を見て、何も言わず素直に水を飲んだ。
するとデービットの体が光り輝き、覆っていた黒い瘴気が体から離れ丸い塊となり宙に浮かぶ。
その塊は部屋の奥にある衣装部屋の中に入っていった。
「……さっきのあれはなんだったんだ!?」
サミュエルは不思議そうに塊が消えた場所……衣装部屋の扉をじっと見つめる。
「苦しのがなくなった……? 発作が治ったのか?」
まだ少しぼーっとしているのか、頭を押さえながらデービットがベッドから起き上がった。
サミュエルは、黒い塊が消えた衣装部屋へと向かおうとしたが、デービットが起き上がったので、体を向き直した。
「デービット、あのね? 僕たちが味わった痛みはね……ゴクッ」
サミュエルは喉を鳴らした後、深呼吸して気持ちを整える。
「え?」
途中で会話を止めたサミュエルを、不思議そうに小首を傾げて見るデービット。
「ちゃんと聞いてね? これは呪いなんだ。僕はずっと呪われていた。そして今日その呪いを解呪した、僕の呪いは呪った者に呪い返しとして返った。この意味が分かる?」
「……え? 呪い? サミュエルが? 僕はそのサミュエルと同じ症状で……あっ!!」
「分かってくれた? 君の症状は呪い返しを受けたからそうなったんだ」
サミュエルからの報告を聞いたデービットは、目を見開き少し体を震わせ驚いている。
「だが! 聞いてくれ。私はそんなことしていない!」
デービットはサミュエルの両方を掴み必死に訴える。
「君が嘘をついていないのは分かるよ? 僕たちは半身を分けた双子だ。だからこそ意味がっ……わからないんだよ! どうして君に呪い返しの症状が現れたのか!」
「私だって分からない! 本当に分からないんだ」
「それは衣装部屋を見れば答えが分かると思います」
二人の様子をずっと黙ってみていたアルビダが、口を開いた。
「え? アルビダ嬢、衣装部屋とはさっきの瘴気が入っていった場所だよね?」
サミュエルは衣装部屋を指差した。
デービットは瘴気を見ていなかったので、指差した方角に何があるのかと見つめる。
「はい、そうです。あの場所に原因の物があります」
アルビダは頷き衣装部屋に向かって歩き出した。
「あっ、待って僕も行くよ」
「私も!」
サミュエルとデービットの二人もアルビダの横に並び衣装部屋へと向かう。
「僕が扉を開けるね」
サミュエルが扉を開くと……デービットの服や小物が並べられた至って普通の衣装部屋にしか見えない。
「やはり! ありましたわ。これが元凶です! この魔具のせいでサミュエル様は呪われたのです」
アルビダが奥に置いてあった小さな箱を手にとり、それを二人に見せた。
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【呪いの魔具】
※これに中に呪いたい者の爪や髪の毛を入れ魔力を送ると、その者の体力を奪い十年後死ぬ。
※中央に鎮座している魔石の色が赤く変わると魔力を送らないと効力が切れる。魔力は毎日送らないといけない。
※呪いを解くには魔石を壊すしか方法はない。
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「先ほど鑑定したのです! これが呪いの魔具だと書いてありました」
「アルビダ嬢は鑑定もできるのかい?」
鑑定ができると知らないデービットが驚く。
「はい。そしてこの箱の中に呪いたい人の爪や髪の毛を入れ、魔力を送ると呪いが発動します」
アルビダはそう言って箱を開けた。
中にか言っていたのは……。
小さな子供の爪とプラチナブロンドに輝く髪の毛。
それを見たデービットは膝から崩れ落ちた。
「あああああああああっ、僕はっ、僕はなんてことを! 僕がずっとして来たことはなんだったんだ。大切な……っ、大切なサミュを苦しめていたなんて!」
デービットは床を叩き、泣き叫ぶ。
その姿は見てられないほどに痛々しい。
サミュエルは泣き叫ぶデービットを抱きしめ「もう終わったことなんだ! 僕たちは呪いの呪縛から救われたんだから」そう言って落ち着かせた。
「みっともない姿を見せてしまった。すまないねアルビダ嬢」
サミュエルに叱咤され、冷静になったデービットはやっとアルビダの方を見た。
アルビダはどうしていいのか分からず、まだずっと呪いの魔具を手に持ったままだ。
「大丈夫です。お二人が元気になられてわたくし、それだけで嬉しいです」
そう言って二人に向かって微笑んだ。その姿は太陽よりも眩しく見えた。
「…………女神」
「…………天使」
その笑顔を見た二人は眩しそうにアルビダを見てボソッと小声で呟いた。もちろんその声はアルビダには聞こえない。
だけど心の声はダダ漏れで。
〝くっ、女神が降臨したのかと僕は思ったよ! 危うく目が神々しさに焼けつくところだった。女神アルビダ嬢にはこの恩をどう返せばいいのか〟
〝そうか地上に舞い降りた天使ってアルビダ嬢だったんだね。私たちを助け、癒しに来てくれたんだね。どれだけ君に感謝したらいいんだろう〟
「ゲフッ!」
———おっ、お二人ともわたくしのことを過大評価しすぎです。そんなに褒められたら恥ずかしすぎて耐えれません。
アルビダは恥ずかしくて俯き、二人のことが見れない。
サミュエルとデービットは、そんな恥ずかしそうにしているアルビダの姿を見て再び悶えるのだった。
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