第45話 本当の敵は誰!?
三人は、それぞれの心を落ち着かせるためにソファーに座った。
テーブルの中央には呪いの魔具が置かれている。
沈黙が続く中、サミュエルは魔具をチラリと見ると口を開いた。
「なぁ、まどろっこしい事は言わない。本題から入るぞ? この魔具は誰から貰ったんだ?」
「…………それはっ」
デービットは唇をギュッと噤んだ。
「これをデビィに渡した奴が、僕たちを苦しめた元凶だぞ! なんで黙るんだ。分かってるんだろ?」
サミュエルが愛称で名を呼び、声を荒げて魔具を指差す。
「……………………さんなんだ」
デービットがボソリと話す。その声はあまりにも小さくか細い声のため聞き取れない。
「え? なんて?」
「第一王子であるリアム兄さんだよ!」
「えっ!?」
デービットの言葉に、サミュエルが瞳を見開き固まる。あまりにも予想外の言葉だったのだろう。
〝嘘だろ!? あんなにも優しいリアム兄さんが僕のことを呪った!? どうして? いつも心配してくれて……困った時は親身になってくれて大好きな……っ〟
———えっ? 大好きなお兄さんが犯人!? サミュエル様の悲しい声が……聞こえてきます。
サミュエルの悲痛な心の声が聞こえてきて、アルビダは口を押さえ涙目になり震える。
「そうだよ! 私たちに一番優しくしてくれたリアム兄さんがっ、私にっ、この魔具を渡してきたんだ。サミュエルの病気を治すための魔具だと……毎日夜に魔力を送らないと、サミュエルは発作で死んでしまうと言われて……私は……」
デービットはそういうと俯き何も話さなくなった。太ももにはポタリポタリと雫が落ちていく。それはサミュエルも同じようで、二人は俯いたまま黙り込み小さな声で嗚咽を漏らした。
アルビダはそんな二人の姿を、黙って見ることしか出来なかった。
———ロビン、わたくし……二人いかけるいい言葉が何も思いつきません。こんなにも悲しくて苦しい心の声が聞こえてきますのに……。
アルビダは膝の上にのせ抱っこしているロビンの頭に自分の頭をくっつけた。
『アビィ、大丈夫。君は十分に二人を癒してる』
アルビダにしか聞こえない小さな声で、ロビンが励ました。
「ロビンッ……」
その声を聞いたアルビダは再びロビンを抱きしめた。
三人が沈黙し黙っていた時だった。
部屋の扉が開き、アルビダの父が入ってきた。その後ろに治癒師の服装をした男が三人続く。さらには灰色の髪色をした男性も入ってきた。
「アルビダ! 一体どういう事なんだい? 私はデービット殿下が倒れたときたのだが……」
アルビダの父がソファーに座っている三人の姿を見て驚いている。
どうやら司書であるサイフォンからデービットの様子を聞き、急いで凄腕の治癒師を連れてきたようだ。
だが倒れたはずのデービットはどう見ても元気そう。アルビダの父が困惑するのも無理はない。
———あっ、あの男性。魔具を見て表情を変え固まりましたわ。あれが何なのか分かっているみたいですね。
アルビダは灰色の髪をした男性の態度が豹変したのを見逃さなかった。
そんな時、サミュエルが口を開いた。
「リアム兄さん、僕とデービットに何かいう事はない?」
———やっぱり! あの方がデービット様に魔具を渡した……第一王子リアム様。
サミュエルが冷めた目でリアムを見る。
「何って? 心配して慌てて飛んできたんだよ? 大切なデビィが倒れたと聞いてね。サミュと同じ発作かもしれないんだろう?」
先ほどの焦った表情など全くなく、ものすごく心配そうに二人を見て微笑む。
〝……平気な顔で嘘を言うんだね。今ならその優しい笑みが嘘だわかる、どうして気が付かなかったんだ。ずっと騙されて僕は……ばかだ〟
〝なんでこんな嘘が見抜けなかったんだ。私の事など全く心配していないではないか……それを気付かずに私はサミュを五年間も苦しませ……くっ〟
二人の悲しい心の声が聞こえてくる。
リアムは平気な顔で嘘を吐く。そんな態度がアルビダは許せなかったんだろう。
魔具を持ち立ち上がると。
「お父様、鑑定できますよね? この魔具が何なのか鑑定してくださいませ」
「え?」
〝私はアビィに鑑定のスキルがある事を話したか? 妻から聞いたのか?〟
どうして鑑定スキルを持っている事を知っているんだと驚く父に、猶予を与える事なく急かす。
「早く鑑定してください」
「わっ、分かった…………はっ!?」
鑑定を使いアルビダの父も見えたのだろう。
「アルビダ……それは呪いの魔具だね」
二人のやりとりを見ていたリアムの表情が焦りに変わる。
「呪いの魔具だって!? それは早急に調べないといけない。どうしてデービットの部屋にそんな危険な物があるんだい? それを私にかしたまえ」
リアムはそう言ってアルビダから魔具を取ろうとするが、アルビダがそうさせない。
「お父様、この中にある物も鑑定してください」
アルビダは魔具を開き中に入っている、サミュエルの髪と爪を見せた。
「これは……小さな子供の……!! サミュエル様の……」
父は爪と髪を鑑定し誰の物かわかったのだろう。流石に驚き口を右手で押さえ動揺を隠した。
「そうです。この魔具を使ってサミュエル様を呪った人がいるんです。そうですよね?」
アルビダはそう言ってリアムを睨む。
「どっ、どうしてそんな事を僕に聞くんだい?」
アルビダが自分たちの為に一生懸命になっている姿を見て、リアムに対し決心ができたのだろう。
デービットがソファーから立ち上がり。
「僕にこの魔具を渡して、毎晩魔力をおくれと言ったのはお兄様ですよね?」
「なっ、何を言ってるんだ? これが呪いの魔具だから、呪った君に呪い返しで同じ症状が出たんじゃないのかい?」
「それに、サミュエルが倒れた日にこの魔具を渡して僕に魔力を毎日送らないと病気が治らないと言ったじゃないですか!」
「その証拠は? どこにあると言うんだい」
証拠がなければ、言った言わなかったの繰り返しでラチがあかない。
二人の言い合いを見ていたアルビダの父が口を開いた。
「証拠なら分かる」
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