第40話 妖精さん! 神水です。
アルビダは興奮気味に部屋に戻ると。
妖精たちにお礼を言うために配信を開始した。
配信を心待ちにしていた妖精たちから、恒例の歓喜のスパチャが始まり、それが落ち着きひと段落するとアルビダは報告を開始した。
「妖精さんのスパチャのおかけでわたくし水魔法のスキルを得たんですが、その魔法で出したお水が……神水になったんです!」
〝へっ!? 神水〟
〝水魔法で神水ってことは、アルビダ様がもう実質女神〟
〝アビィ様が女神は当然〟
〝願いが叶ってよかったね〟
〝そんなことあるのか……?〟
〝このまま行くとヒロイン必要なくね?〟
〝アビィたんがヒロインかぁぁぁ〟
〝アルビダ様呪いを解くことができるのが嬉しいんですよね〟
〝よかったねアルビダ様〟
アルビダの報告を聞いた妖精たちからの〝よかったね〟の応援スパチャが止まらない。
その優しい気持ちが嬉しくて、アルビダは終始微笑んでいた。
★★★
妖精たちへの報告配信が終わった後。
アルビダはロビンを連れて父の執務室の扉の前に立っていた。
理由は再び第三王子に会うためである。どうやって会おうかロビンと色々と相談した結果。
王宮に併設された図書室に本を借りに行きたいから行っても良いかと父にお願いをすることにした。
図書室は開放されており、貴族であれば誰でも入ることができる。
場所もサミュエルと会った庭園からさほど遠くない。
これほどの好条件はないと思い執務室にきたわけだが、もう扉の前ですでに十分は立ったままである。
———お父様の執務室に初めて来ました。いくらお父様が優しくて愛してくれていると分かっている今も、嫌がられるんではと思い緊張します。
そんなアルビダを見かねたロビンが動き出す。
前向きに抱かれていた体をくるりとひねり、アルビダを見つめる。
『いい? アビィ、そんなに緊張しなくても大丈夫。僕だって一緒にいるんだから』
「ロビン……ありがとうございます」
アルビダはロビンの優しい気持ちが伝わり緊張が少し緩む。
大きく深呼吸した後、執務室の扉をノックした。
「なんだ? 入れ」
中から父の声が聞こえる。
「失礼致します」
アルビダが中に入ると目を見開き驚く父。まさかアルビダが執務室に来るとは思っていなかったのだろう。だがすぐに冷静を取り戻す。
〝アビィたんが執務室に来てくれた! 今までこんなこと一度だってなかったのに! 今日は記念日だ。……だが何のようだ?〟
「ゲフッ」
外見は取り繕っていても、内心までは取り戻せてなく。色んな感情がダダ漏れの父。
———お父様、おかげで緊張が緩みました。仕事の邪魔だとかの感情があったらどうしようかと思っていました。
「アルビダ、何のようだ?」
「お父様にお願いがありまして来ました。わたくし明日、王宮図書室に行きたいのです。全ての本が揃うと言われている図書室に行って色んな本を読みお勉強をしたいのです!」
「……王宮図書室に?」
父の右眉がぴくりと動き、眉間に深い皺が入る。その形相は睨まれているようで恐ろしく怖い。
「お願いします!」
〝アビィたんが自分で勉強したい! そんなことを言うなんて! 良い子に育って私は嬉しい、だが……心配ではある〟
「ダメでしょうか?」
「ぐっ」
黙り込む父に追い打ちをかけるが如く、上目遣いでおねだりするアルビダ。
そんな目で見られたら父はもうダメだろう。
「わわっ、分かった! 明後日仕事で王宮に行く予定だったのだが、明日いくことにしよう」
〝アビィたんのおねだり、破壊力ありすぎだろう! 私はこれからこの先、この可愛いおねだりを断れる自信がない〟
「お父様! ありがとうございます」
アルビダは嬉しくて思わず父に抱きつく。
〝あうっ、アビイたんから抱きついてきてくれた! 今日は何個記念日が増えるというのだ! 私は幸せすぎて死んじゃうんじゃないのか〟
「えっ、お父様に死なれたら困ります! 長生きしてください……あっ!」
———やってしまいました。死ぬなんて聞こえてきたからつい心の声に返事をしてしまいました……。
「へっ? わっ、私は死なない。部屋に戻りなさい」
〝あああああっ、私はまた声に出してしまっていたのか!? そんなこと言われたらアビィたん怖いよね。変なこと言ってごめんね〟
父はまさか心の声を聞かれているなんて思いもよらず、自分が言ってしまったと頬を染める。
もちろんその顔をアルビダに見られる訳にはいかないので、右手で顔を覆いアルビダに背を向けた。
「では失礼します」
そんな父に会釈し、アルビダは満面の笑みで執務室を出て行った。
———やりましたわ! これでサミュエル王子を救えます!
この時アルビダは、会えることしか考えてなく。
どうやってサミュエルに、自然な流れで神水を飲せれば良いかまでは考えていなかった。
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