第37話 妖精さん王子様を助けたいです!


 リーリーローズの新作のドレスお披露目は大成功となった。

 令嬢たちはアルビダが着ているドレスを注文した。後にこのドレスはアルビダモデルとして不動の人気となるのだが。


 今もまだアルビダは令嬢たちの中心にいた。

 それが気に入らないマウンティー令嬢は、どうにか注目を自分に集めようとするもアルビダに注目しているため相手にされず。諦めたのか一人で茶菓子を食べていた。


 そんな時だった。


 急に令嬢たちから歓声がまきおこる。


 その声に気付きアルビダたちも声のする方を見ると。


 ———あれは! 


 第二王子がアルビダの父と共にこちらに向かって歩いてきていた。


 ———お父様と……第二王子様でしょうか? サミュエル様と同じ顔をされています。違うのは……髪の色が茶色いところくらいでしょうか。サミュエル様のお色はプラチナブロンドでしたから。


 すれ違う令嬢たち全員に挨拶を交わす第二王子。アルビダとの距離はさほど離れていないのだが、挨拶が忙しくなかなか近くに来ない。


 挨拶を交わした後、令嬢たちは第二王子ともっと話をしたそうだが、横に控えているアルビダの父の威圧が怖すぎて、挨拶以上の会話を交わさないでいた。


 令嬢たちの挨拶が終わると、父が第二王子を連れやってきた。


 今アルビダの近くにいるのは、リリーローズとジェイデンとジュリアの三人。

 アルビダの所に集まっていた令嬢たちは第二王子の登場により、そちらに集まって行った。

 あまりにも令嬢たちが第二王子を囲ったので、アルビダの父が側にいなければ収集がつかなかくて、きっと今も令嬢たちに囲まれていただろう。


「アルビダ、ピーオニー王国第二王子であるデービット王子だ」

「こんにちは、テービット・ピーオニーです」

「アルビダ・イングリットバークマンです」

「リリーローズ・シュトロンです」


 父に紹介されアルビダとリリーローズはカーテシーで挨拶を交わす。

 ジェイデンとジュリアは王子と面識がすでにあるのか、仲良さそうな雰囲気だ。


「ジュリア嬢、病気が回復したのですね」

「はい。ご心配おかけいたしました」

「ジェイデン本当に良かったな。心配しているお前の姿は見てられなかった」

「デービット、もうその話はいいだろ!」


 ジェイデンが少し照れくさそうに鼻先を人差し指でかいている。


「では私は他にも用があるので失礼するよ」

「ご一緒していただき、ありがとうございました」


 ディービット王子がアルビダの父に頭を下げ見送った。


〝これで私の役目は終わりだ。これ以上は令嬢たちも無理には集まってこないだろう。アビィが少しでもこのパーティーを楽しんでくれるといいのだが〟


 この後パーティーが終了する時間まで、四人でゆっくりと楽しい時間を過ごすのだった。




★★★



 パーティーが終わり、邸に帰ってきたアルビダとロビンは一日の出来後を思い出していた。


「今日は時間が経つのがすごく長く感じました。でも、とても楽しったです」

『良かったね。アビィ』

「それでは早速、妖精さんに今日のことを報告したいのです」


 アルビダは両手を力強く握りしめ、瞳を輝かせる。


『大丈夫疲れてない?』

「平気です、早くサミュエル様のことを聞きたいです」

『そうだね。じゃあ早速配信しようか』


 ロビンの首から下げられた懐中時計が輝く。すると瞬く間に妖精たちとアルビダをつなく光でできた画面が作られた。


〝フォぉぉぉ! アビィたんこんばんわスパちゃ〟

〝正座待機しておりもうしたスパちゃ〟

〝パーティーは楽しめた?スパちゃ〟


 妖精たちと繋がったと同時に、文字とスパちゃのコインが画面を埋め尽くす。

 この日は朝配信していなかったのと、パーティーに行っていることを妖精たちは知っていたので、夜の配信待ちの妖精が多数いたようだ。

 同接数の数はどんどん増えていく。


〝第二王子はどうだった?〟

〝嫌なことはなかったゆ?〟

〝アビィたんの可愛さにビビったやろな〟


 どんどん文字が羅列されていくなか、アルビダは妖精たちに質問した。


「皆様に教えて欲しいことがあるのです! 今日のパーティーでサミュエル王子とお会いしたのですが、呪われていました。その呪いはどうしたら解呪できますが?」


〝サミュエル! 呪いの第三王子ね〟

〝学園に入学するまで呪いは解呪できないな。金杯の聖女ミリーが聖なる盃を使って神水を作り出し、その水を飲んで呪いの力を弱め最後は呪ったやつに呪い返しして解呪だな〟

〝サミュエルは隠しキャラやから、裏ルートを攻略するのもなかなかの至難の業〟


「え……? 学園がスタートするまで? 解呪できない? そんな! 妖精さん何か手立てはないのですか!? このまま何年もずっと呪いで苦しむのなんて可哀想です」


アルビダは画面に近づき懇願するも……妖精たちの反応はイマイチ。

そんなやりとりを見ていたロビンが『しょうがないなぁ? 頑張ってヒントを思いついてくれたら今日のパーティーの隠し撮りを見せてあげる』と言い出した。


 その言葉を聞いた妖精たちは大興奮、画面が揺れるかと思うほど文字が一斉に羅列されていく。


〝ぬおおおおおおおおおっ!〟

〝アイデアキボンヌ〟

〝どうやって呪いを解くねん〟

〝だがしかしワシらにできるのは、スパちゃくらいしか〟

〝それだよ! もうそれに賭けるしかない。僕たちがスパちゃを送って、そのポイントでアルビダ様が新しいスキルを得るときに解呪のスキルもいつか得れるんじゃ!?〟

〝そうじゃぁぁぁぁ! もうそれしかない!〟

〝スパちゃ祭りじゃぁぁっ〟


 画面がコインで溢れかえる。もう画面はコインの金色にしか見えない。


『ふうん……なるほどね。スキルに賭けてみるか。面白いじゃない。よし合格。パーティーの動画を見せてあげよう』


 ロビンの録画配信がスタートした。

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