第36話 ドレスのお披露目
リリローズが令嬢たちに近付くと、それに気づいた令嬢が一人一人と自然に集まってくる。
気がつくと輪の中心にアルビダたちがいる事に。
先ほどまで輪の中心にいたマウンティーは蚊帳の外となっていた。
それほどまでに、リリーローズがどんなデザインのドレスを着ているのか令嬢たちの注目の的となっているのである。
だが今日のリリーローズのドレスは、過去に販売されている既存のデザインのドレスを着用している。
毎回お茶会の都度、新作のドレスを着用し参加していたリリーローズを知っている令嬢たちは『???』と少し戸惑っている。
そしてリリーローズが仲良さげに手を繋ぎ横に立っているアルビダに今度は注目するのだった。
ある程度、人が集まったところでリリーローズが新作のドレスのことを紹介しようとしたところで茶々が入った。
「リリーローズ様! いらっしゃったのですね。今回も最新のドレスを購入させて頂きましたわ」
先ほどまで輪の中心にいたマウンティーが、ドレスの裾を広げ自慢げに話しかけてきた。
どうやら注目を集めていたのは、マウンティーが着ていたドレスが最新作であり、発売後即完売の品であったからのようだ。もちろんアルビダが着ている最新作を除けばであるが。
「マウンティー様、購入ありがとうございます」
リリーローズは作り笑いをしお礼をする。
〝購入していただけるのはありがたいのですが、こうも毎回他の令嬢に自慢するのはどうかと思います〟
その心の声がアルビダに聞こえ動揺する。
——リリィ様が困っています。ジュリア様もでしたし、マウンティー様はもしかして問題が色々とおありな方なのでしょうか?
アルビダが観察するようにマウンティー令嬢を見つめていると。視線が合う。
「あら……先ほどはどうも、ええ……とイングリットバークマン令嬢様」
わざと言葉の間を開け、馬鹿にしたように声をかけるマウンティー令嬢。どうやらリリーローズと一緒にいるのが気に入らない様子。
「真逆なお二人がご一緒とは不思議な組み合わせですね」
〝奇抜で下品なドレスを着て目立とうとしている令嬢と、流行最先端を突き進むリリーローズ様がなんで一緒にいるのかしら? それなら最新のドレスに身を包んだ私と一緒にいた方が、何倍も良く見えますのに。そして最新のドレスを私に提供とかしてくれたら……〟
マウンティー令嬢の悪意の声が聞こえてきて、アルビダの顔が少し強張る。
「不思議な組み合わせですか? なぜそう思うのです? 私は最高に相性抜群のだと思っていますのに」
〝アビィ様と私が不思議な組み合わせ? そんな言い方をするのはやめて頂きたいわ! アビィ様が私といるのを懸念したらどうしてくれますの!〟
リリーローズは『何を急に変なこと言い出しやがって』っと怒りの感情を必死に抑え、笑顔で返事を返す。
マウンティー令嬢の言葉に苛立ちを覚えたのはリリーローズだけではない、ジェイデンやジュリアも同じように内心では怒りを露わにしていた。
〝これ以上アルビダ嬢に悪がらみをするなら、僕にも考えがある〟
〝また遠回しに馬鹿にして……アビィ様の美しさに嫉妬しているんでわきっと!〟
そんな自分の事のように怒ってくれる二人の声を聞き、アルビダの嫌な気持ちが薄れていく。
「なぜですか? だって、流行の最先端にいるリリーローズ様の横に、そんな奇抜なドレスを着ている令嬢がいるのはおかしいと思いませんか?」
マウンティーは、さも自分の言い分が正しいかのように、周りにいる令嬢たちに同意を求める。
だが周りの令嬢は、その意見に同意するものがいない。なぜならそれを圧倒するほどにアルビダのドレス姿は美しかったから。
同調してくれない周りを『え?』と不思議そうに見るマウンティー令嬢。
そこに般若のような顔になったリリーローズが追い討ちをかけた。
「はぁ、そうですか。あなたには分かって頂けないのが残念ですね、アビィ様が着ているドレスはまだ未発売の
「はぇ!?」
リリーローズの言葉を聞いたマウンティーが、口をあんぐりと開け淑女らしからぬ間抜けな顔で固まる。
未発売の最新作のドレスと聞いた令嬢たちは、簡単をあげアルビダが着ているドレスを大絶賛するのだった。
「やはり! 斬新なデザインですがとても素敵だなと思っていました」
「さすがリリーローズ様です。可愛くて大人っぽいデザイン、こちらいつ発売されますの!?』
「発売日には絶対に並びますわ」
「イングリットバークマン様にとてもお似合いです。美しすぎて目が焼き切れるかと思いました」
熱狂的な褒め言葉に、リリーローズは『そうでしょうよ!』と言わんばかりに小鼻を膨らませ嬉しそうに微笑む。
その姿はどちらかというと、ドレスよりアルビダのことを褒められたことの方が嬉しそうだ。
当のアルビダはと言うと、こんなにも大勢に大絶賛されたことがないので、恥ずかしいやらどう対応していいやらで色んな感情でパニックになり、真っ赤な顔をして固まっていた。
そんな可愛いアルビダの仕草を見た令嬢たちは、さらに興奮し感嘆の声をあげるわけなのだが。
そんな中、ただ一人。マウンティー令嬢だけが唇を噛み締め、アルビダを睨んでいた。
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