第35話 第二王子様
「ねぇロビン、サミュエル様の呪いはどうすれば解呪できるのでしょう?」
『こればっかりは、帰ってから妖精たちに聞いてみないとだね。今、アビィが気にすべきはジェイデンとジュリアだよ?』
ロビンはアルビダに対して分かってるの? っと抱っこされている状態で顔だけ振り返ると上目遣いでアルビダを見る。
「そんな目で見ないでください。反省してますわ」
『さっ、もうすぐ会場に着く。僕はぬぐるみに戻るね』
「はい」
アルビダがパーティ会場に戻ると、それに気づいたジェイデンとジュリアが駆け足で近寄ってきた。その表情はかなり困惑している。
「アルビダ嬢、急にどうしたんだい?」
〝マウンティー令嬢のことが嫌だったのだろうか?〟
「アルビダ様……もしかしてマウンティー様のことが嫌でしたか?」
〝絶対そうよ! あの女は性格が悪いから〟
——お二人ともがマウンティー様の事だと思っている。わたくしったらそんなにもあからさまに態度にでていたのですね。反省です。
「いえ……すみません。本当に何もないのです。急に走って行ってしまって心配おかけしました」
アルビダは二人に向かって頭を下げた。
「そんなことしないでください、せっかくなんだパーティーを楽しもう」
「そうですわ。テーブル並ぶお茶菓子は、昼過ぎには完売している人気店の甘味がいっぱい並んでましたよ! いきましょう」
ジュリアに手を引かれ三人で空いているテーブル席に座る。するとすぐさまメイドが茶菓子と紅茶を持ってきてくれた。
「わぁ♪ 宝石みたいですね」
「本当ですね。ジュリア様のお話し通り素敵なお茶菓子ばかりです」
二人はテーブルに並ぶお茶菓子に目を輝かせている。
ジェイデンたちと美味しいお茶菓子を食べながら楽しい時を過ごしていると、一人の少女が手を振り近付いてくる。
「アビィ様、こんにちは。ドレス似合っていますね」
「リリィ様!」
アルビダは思わず席を立ち上がり、リリィのところに駆け寄る。
「ロビンのお洋服まで頂きありがとうございます」
「ロビンくんも絶対一緒に来ると思っていたので、お揃いで作らせていただきました」
〝ふわぁぁぁっ、ふつくしい! 私の想像をはるかに超えていきましたわ! 女神なの? いや、もうこれは神が私たちのご褒美のために誕生させた美姫、見てるだけ! それでいいんです、最高です〟
「ゲフッ!」
———リリィ様! 何を考えているんですか。さすがに恥ずかしくて……。
リリィの心の声を聞いたアルビダが、抱いているロビンの頭に顔を埋め頬を染めて恥じらう。そんな姿を見た三人は……。
ホウッ……っと声をもらし、眩しそうに目を細めうっとりとアルビダを見のだった。
「アルビダ嬢、こちらのご令嬢は?」
はっといち早く正気に戻ったジェイデンがリリィのことをたずねた。
「こんにちは。初めまして、リリーローズ・シュトロンと申します。以前にありましたリンドール邸でのお茶会に参加させていただいた時に、アビィ様と親睦を深めることができました。感謝いたします」
挨拶を済ませた後、リリィは淑女のカーテシーを披露した。
「こんにちは。ジェイデン・リンドールです。君が有名なリリーローズ令嬢ですか。手がけるドレスや小物が令嬢たちから人気だと聞いていますよ」
「ありがとうございます」
ジェイデンに褒められ少し恥ずかしそうにお礼を言うリリィ。
「こんにちは。ジュリア・リンドールです。私も欲しいのですが、人気ですぐに完売してしまいなかなか手に入れることができません」
「病気でずっと伏せっておられたと聞いていました。元気になられたんですね。良かったです」
リリィの言葉に、待ってましたとばかりに瞳を輝かせるジュリア。
「そうなんです! これも全て天使と見まごうばかりのアルビダ様のおかげなのですわ! 私の病気の原因を見つけ出し、治癒薬を作って下さいました! まさしく美神」
ジュリアの言葉を聞きリリィは大きく頷く。
そして二人は無言で握手した後。うんうんとアルビダの良さについて、熱く語るのだった。
そんな二人の様子をアルビダはなんとも言えない顔で見ていた。
ジェイデンはというと、その会話に入りたそうに何か言おうとしては、口元をおさえていた。
「ではアビィ様。令嬢たちが集まっていますので、その場所に一緒に行っていただけますか」
リリィは令嬢たちで賑わっている場所を指差した。
——ドレスの発表ですよね。……緊張します。
「何があるのですか?」
ジュリアが興味津々にリリィに問いかける。
「はい、新作ドレスのお披露目ですわ。アビィ様にとてもお似合いのドレスを見ていただくのです」
「まぁ! それは最高に素敵ですね。私もぜひご一緒させて下さいませ」
リリィとジュリアに連れられアルビダは令嬢が集まっている場所に向かうのだが、そこには先ほど嫌悪の心の声を聞いた。マウンティー令嬢が輪の中心にいて何やら楽しそうに話していた。
その姿を見たアルビダは、また何かありそうで行きたくないと思うのだった。
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