第34話 呪いについて

 アルビダは、王子のステータスに呪われていると書かれていた文字を発見し動揺する。どうしようか悩むも、【呪われている】の文字に王子に気づかれないように触れた。


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※魔具による呪い。かなり強い呪術を使っている。この呪術は禁忌の術としてピーオニー国では百年前に禁止されている。

※この呪いの術を発動させるために、二人の術師が命を落としている。

※呪いを解呪するためには魔具を探し出し壊すしか方法はない。

※呪いの効力を弱めるのは聖なる水【神水】を飲むこと。

※呪いをかけられてから解呪できずに十年の時が経つと死んでしまう

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「ひっ……」

「どうしたの?」

「んんっ、いえなんでもないですわ」


 ——呪いのために人が死んでいる!? そんな術があるんですか? しかも解呪できないと死ぬ!? ピーオニー様はいつ呪われたのでしょうか?


 アルビダは動揺を落ち着かせるために呼吸を整える。冷静に王子と話をするために。


「あのう、さっきの呪っ……発作ですがいつ頃発症されたのですか?」


「発作かい? ……僕が六歳の時だね」


 発作についてあまり触れてほしくないのか、ピーオニーの眉がぴくりと動いた。


 ——今の年は十一歳、発症して五年が経っている! タイムリミットは後五年。


「そんな幼少期に……かなりお辛かったですよね」

「……そうだね。それまで僕は病気など一切しなかった健康優良児だっただけに……どうして僕がと思ったね」


 ピーオニー王子はキュッと下唇を噛んだ。それはアルビダにも分からない程度に。


「まっ、こんな面白くない話はもうやめよう。イングリットバークマン嬢、君も第二王子のお披露目会に来ているんだろう?」

「あっ、はい」


 ——ピーオニー様が第二王子様かと思っていたのですが……この話ぶりだと違う?



 アルビダは王子の様子を伺いながら返事を返す。


「では会場に戻らないと。僕に会ったことは内緒にしてね?」


 ピーオニーはそう言って人差し指をたて口に当てる。


「はい、ピーオニー様は会場に来られないんですか?」

「……そうだね。僕はさっきみたいな発作が一日に二回は起こるからね。会場で急に発作が起こるとみんなに心配をかけてしまうからね。この場所でゆっくりしてるよ」


 ピーオニー王子は少し寂しそうに空を見上げた。その姿を見てこの呪いさえなければ、一緒に会場に行けたのではとアルビダは思う。


「ピーオニー様とも一緒にパーティーを楽しみたかったのですが、発作は心配なので仕方ないですね。では行ってきます」


 アルビダはロビンをギュッと抱きしめ、その場を去ろうと椅子から立ち上がった。

 そんなアルビダに向かって。


「仲良くなったよしみだ、僕のことはサミュエルと呼んでくれたまえ。またこの場所で会えるといいね」


 サミュエル王子はアルビダに向かって右手を指しだした。

 アルビダは差し出された右手をギュッと握り返すと。


「サミュエル様。また王宮に来た時はこの場所に遊びにきますね。わたくしのことはアルビダと呼んでくださいませ」


 そう言って満面の笑みを浮かべた。


「本当かい? それは楽しみだね。また会える日を楽しみにしているよアルビダ嬢」

「はい! では失礼します」


 アルビダはサミュエル王子に会釈するとその場を立ち去った。

 会場に戻りながらも呪いのことが頭から離れない。


 ——わたくし……どうにか! サミュエル王子の呪いを解呪したい! 早く妖精さんたちにサミュエル王子の呪いについて教えていただきたいです。

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