第33話 呪われた王子様
——どうしましょう。ものすごく苦しそうですわ。
「あのっ……だっ、大丈夫ですか?」
少年に近寄り声をかけるも何も応答がない。
だがアルビダの掛け声に気が付いたのか、胸をおさえゼェゼェと息苦しそうにしながらも視線があった。
それを確認したアルビダは、少年の目を見つめ大きな声で話しかけた。
「誰か人を呼んで来ますから! ちょっと待っててくださいね」
アルビダがそう言うと、手をガシッと掴まれる。
「え?」
「……ない、で」
「なんて?」
少年がなんと言ったか聞こえず聞き返す。顔に耳を近づけ少しでも声をよく聞こえるようにして。
すると少年も少し体を起こし、アルビダに顔を近づけ声を絞り出した。
「誰も……呼ばなくていい……このままじっとして……れば……おさまる」
——こんなにも苦しそうなのに誰も呼ばなくて良いなんて……何か理由があるのでしょうか?
アルビダは困惑しながらも少年の横に座り、苦しそうにしている胸を優しく撫でた。これはアルビダが風邪を引いた時などに、母がよくしてくれた行為。母と同じことをして、少しでも辛さを和らげることができたならと、少年を思っての行動だった。
「大丈夫……大丈夫……痛いの全部どこか遠くまで飛んでいってください!」
——よくお母様と一緒に言ったおまじない。気休めだしどうにかなるわけでもないのですが。
少年はどうにかしようと、懸命なアルビダの姿を見て、少し口角が上がり笑ったように見えた。
〝この不思議な女の子は一体なんだ? この場所は僕しか知らない秘密基地だったのにまさか人がいるなんて……失態を見せてしまった。急に現れた僕のこと怖くないんだろうか〟
「えっ!? ここはあなたの秘密基地でしたの!? それはすみませんでした。誰もいない場所を無我夢中で走ってましたら、この場所にたどり着きまして……って、あっ!」
アルビダはつい心の声に返事を返してしまう。しまったと思い思わず手で口を塞いだ。
〝あれ!? 秘密基地って言ったのか僕は……ん? ……いつもこの発作になると一時間は動けないのに、呼吸が楽になってきた。この少女に撫でてもらってるから? そんな事で安心して楽になるとか……そんな精神でどうする。もっとしっかりしないと……一国の王になどなれない〟
「ええっ、おっ!」
アルビダは慌てて口を閉じる。
——また心の声に返事するところでした! 王になるってことは、この方は王子様なのでしょうか?
少年は不思議そうにアルビダを見つめている。アルビダの表情がくるくると変化しているのが面白いんだろう。
〝不思議な女の子だな〟
体調がだいぶ優れてきたのか、少年は体を起こしその場に座った。
「ありがとう。君のおかげで大分楽になった」
胸に置いていたアルビダの手を取ると、握手するように握りしめた。
「いいえ、何もできずで……」
「君の声やこの手に癒された気がするよ」
そう言ってアルビダの手を見つめる。
「そっ、それならよかったです」
———私の手が少しでも手助けになったのなら良かったです。あんなにも苦しそうでしたから。
「よし……立てるね。地面に座って話すのもどうかなと思うので、椅子に座って少し話さない?」
「はい」
少年は自ら立ち上がると、右手を伸ばしアルビダの手を引き立たせた。
「このクマは君の?」
先に椅子を独占していたロビンに気づいたのか、ロビンを抱き上げアルビダに渡す。
「ありがとうございます。大切なお友達なんです」
アルビダはニコリと微笑むと、ロビンを受け取り膝の上に乗せた。
「僕はサミュエル・ピーオニー。よろしくね」
「よろしくお願いします。私はアルビダ・イングリットバークマンと申します」
——ピーオニー!! やはり王子様。
「あなたは……ピーオニー王国の王子様なんですね」
「うん、そうだね。初対面で恥ずかしい所を見せてしまったね」
「いえ、そんなこと……びっくりしましたが、元気になられて安心しました」
「あれは……僕の発作なんだ。勝手な都合で申し訳ないんだが、さっきのことは内密にしてほしい」
そういうと、サミュエルは頭を下げた。
「あっ、ピーオニー様。頭を上げてください! 誰にも言いませんので」
「ありがとう、恩にきるよ」
ふとアルビダは思った。鑑定を使えばジュリアの時のように王子の発作を治せるのではないかと。
王子に軽い気持ちで鑑定魔法を使った。
《鑑定》
——————————————————————
名前 サミュエル・ピーオニー
年齢 十一歳
体調 不調(呪われている)
魔力 ★★★★★★
スキル 光魔法♢♢♢
炎魔法♢♢
雷魔法♢♢
好感度 ♡
———————————————————————
「えっ!?」
「ん? どうしたの?」
「いえ……なんでもありません」
アルビダは鑑定結果に驚き思わず声を出す。
——呪われている!?
★★★
アルビダ「
ロビン「そうだね。アビィはまたジュリアの時のように助けたいとか思ってるんじゃないの?」
アルビダ「はい、もちろん! ですので
アルビダは頭を下げカーテシーを妖精さんに披露する。
ロビン「アビィ……★★★のおねだりが上手になってきたね」
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