第15話 熱花草と病気
「もちろんですわ! わたくしにお手伝いできることは、なんでもします」
ジェイデンに助けてくれと頼まれ、アルビダは両手を力強く握り締め返事を返した。
自分のことを信じてもらえたことが嬉しかったのだろう。その表情は満面の笑みを浮かべていた。
「それでは、ジュリアの病のことを詳しく教えてくれますか?」
「はい。病名は【熱花病】この病気にかかるのは非常に稀です」
「まれ?」
「はい。病原となる熱花草の花粉を吸うと、この病気になるのですが、熱花草の花は百年に一度しか花を咲かせないので、この花の花粉を吸うこと自体が難しい。だから今まで、誰も知らない病だったのだと思います」
「花の花粉が原因だったなんて……ってことはジュリアはこの熱花草をどこかで手に入れたのか、一体どうやって……?」
ジェイデンはジュリアに熱花草の事を質問するも、返ってきた答えは「そんな花……知らない」だった。
「ってことは……知らずにどこかで熱花草を見つけて、花粉を吸ってしまったんでしょうね」
「そうですわね。……そうなると困りましたわ」
「え? 困る?」
「はい。この病を治すのに必要なのが、熱花草の葉なのです。それを煎じて飲めばこの病気は治ります」
「なんだって!? そんな……見たこともない花を探さないといけないなんて……大きな湖に落ちた、小さな宝石を探すよりも難しいじゃないか! そんなの無理だ」
ショックのあまりジェイデンは、膝から崩れ落ちるようにして地べたに座り込んでしまった。その姿を見たアルビダも同じように落ち込む。
———わたくしは治し方が分かっただけで、もう完治できる気持ちでいました。そうですよね、熱花草を見つけださなければ解決にならないのに……!
アルビダは自分の考えのなさに愕然とし、抱っこしていたロビンの頭に顔を埋める。
すると人前では今まで動いたことのないロビンの頭が動く。
ロビンは抱っこされたまま顔を上げ、アルビダを見つめる。
『アビィ? 君はその程度で落ち込むの? 熱花草の事をアビィが教えてあげたらいいんでしょ? 鑑定の画面には絵付きで説明されてるんだから!』
その一言だけ言うと、ロビンはピクリとも動かなくなった。
落ち込むアルビダの姿を見て、じっとしていられなかったのだろう。
そんなロビンの優しさが伝わり、アルビダはやる気を取り戻す。
———ロビン……心配かけて申し訳ありません。そうですわよね! 落ち込んでる場合じゃないですわ。
ロビンの言うとおり、わたくしは熱花草を知っているんですから!
そうですわ、わたくしが絵を描いてジェイデン様に説明すれば良いのでは……!
「ジェイデン様、絵を描く道具を貸して頂けないでしょうか?」
「……絵を描く道具? 良いですが……何に使うのですか?」
目に生気が灯ってなまま、ジェイデンはアルビダに返事を返す。
なぜ今そのような物が必要なのか? との気持ちを飲みこんで。
「わたくしは【熱花草】のことを知っていますので、私が絵を描いて説明すればジュリア様も思い出すんじゃないかと思いまして……」
「……え?」
アルビダの話を聞き、生気がなかったジェイデン目に光が宿っていく。
「ナイスアイデアだよ! 早速用意してもらいますね」
そういうも待てなかったのだろう、ジェイデンは自ら絵を描く道具を取りにいくのだった。
★★★
ジェイデンから道具をもらうと、アルビダは早速作業に取り掛かった。
その様子をジェイデンは横から感心して見ている。
「アルビダ嬢は絵の才能があるんだね」
「ありがとうございます。……これで完成ですわ」
完成した【熱花草】の絵は、花の細やかな特徴までもが丁寧に説明書きされていて、さながら図鑑のような仕上がりとなっていた。
アルビダの絵を見たジェイデンは「こんなにも素敵な絵なら、ジュリアも絶対にわかるよ!」そう言って意気揚々と絵を持っていくと、興奮気味に「この花を知らないかい?」とジュリアに質問した。
返ってきた返事は……。
「……知ってるよ。偶然……見つけて……持って返って……きた……んだけど、1日で枯れちゃって……悲しかったの……」
ジュリアの話を聞いた二人は、瞳が輝き歓喜の声を上げた。
「やったー!」
「やりましたわ!」
アルビダとジェイデンは飛び上がって喜び、ハイタッチを交わすのだった。
その後……「淑女らしからぬ行動をとってしまった」とアルビダは後悔するのだけど。
★★★
ロビン『アビィ? 次は熱花草探しだね』
アルビダ「はい、そうなのです! 絶対に見つけますわ」
ロビン『頑張ってね。ところでアビィ? お願いを忘れてない?』
アルビダ『あっ、そうでしたわ。
ロビン『はい。よくできました』
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