第2章 第2話

バーで酒を飲んだ後は、チンピラとのいざこざを忘れるほどすっかり気分が良くなっていた。


すでに日は暮れている。仕事終わりの人が増えつつある人通りの多い通りを抜けて、電車で家に帰った。


家に帰ると、何故か妹が玄関で待ち構えていた。何か企んでいるような顔をしている。


ちなみに妹は私より2つ下で、私が大岡山工業大学に通っているのと対照的に文系で二橋大学に通っている。兄の私がいうのもあれだが、とても可愛い。身長は160cmちょいで小顔、目は吊り目なのだが、笑うと目尻が垂れて一気におっとりした顔になる。


そのギャップで、結構モテているとか何とか。ちなみにスタイルも良く、どちらかというとやや細身くらいなのだが、自己申告によるとEカップらしい。


「おかえり。またお酒飲んでるでしょ」


なぜか妹は私がお酒をちょっとでも飲んでいるとわかるらしい。一度ひょっとしてお酒臭いか聞いてみたのだが、何となく歩き方や表情で判断しているとのことだ。


この観察力の高さ、私よりもよっぽど暗殺者に向いているのではないだろうか。


「お父さんが待ってるよ。話の内容を聞いたら驚くと思うよ。さあ、早く早く。」


おかしい、私の一族が暗殺家業をやっていることは暗殺者である父と祖父、そして私しか知らないはずだ。妹のこの様子では、今日何で呼ばれているのか把握しているように見える。


怪訝に思いつつも、父の部屋に入る。


父はついてきなさいと言って、何故か車の置いてあるガレージの方に向かった。私もその後についていく。


すると、ガレージに車が1台増えている。カバーがかかっているため、何の車かはわからない。父はにっこりと笑って


「さあ、お前へのプレゼントだ! 」


そういうと父はカバーを一気に外した。中から出てきたのは白のポルシェ718ケイマンだ。ポルシェ社が作るエンジンをミッドシップに搭載した2人乗りのスポーツカーで高い運動性能を誇る。


「最近お前も単独での仕事を多くこなしているから、自前の車があった方がいいと思ってな。もっとも、いうまでもないことだが足がつく可能性があるから際どい任務の時は使うなよ。」


なるほど、妹が言っていたのはこのことか。


素直に嬉しいが、若干この車は目立つ気もする。もっとも、父が趣味で乗っているアストンマーティンDB11に比べればましだが。ちなみに、うちにはもう一台家族で出かける時に使う車としてベントレーフライングスパーが置いてある。


父から鍵を受け取って内装を確認する、赤と黒のツートンレザーでどちらかというとスポーティな出立だ。当然、仕事に使うことを考えて中にドラレコは搭載されていない。


父にお礼を言った。ちなみに、今日仕事に関する話があるというのは私の早とちりで、単純にこれをサプライズで渡したかっただけらしい。


家に戻ると、妹がにっこりとしている。


「車どうだった。私を乗せてどこか遊びに連れていってよ。」


仕事も入っていないし、学会の予稿も提出したしそれもいいかもしれない。結局、妹と話し合った結果、2泊3日で2人で温泉旅行に行くことにした。










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