第2章 第1話
今、私はヤンキーというかチンピラというか、ともかくあまり関わり合いになりたくない手合いに囲まれている。
なぜこのようなことになったのかというと、好奇心で普段あまり行かない土地の、裏路地に入ったことが不味かった。
たまたまそこにチンピラが1人いて、私の何が気に食わなかったのかがわからないのだが、因縁をつけてきたのだ。
さっさとその場から立ち去りたかったが、相手は腕を掴んできて、なおも顔を近づけて因縁をつけてくる。
流石に腹が立ってきたので、こちらも攻撃を試みることにした。創作物の暗殺者であれば、華麗に一撃で仕留めるのだが、私にはそんなことはできないので、チンピラの頭の後ろに視線を向ける。
それに気づいたチンピラが一瞬私から目を離したので、思いっきり不意打ちで鳩尾を殴った。攻撃が来ると分かっていない時の人間は想像以上に脆い。彼は地面にうずくまった。
その隙に腕を振りほどいてダッシュで逃げようとしたのだが、そこでチンピラの仲間であろう奴らが、逃げようとした先から4人ほどゾロゾロやってきた。今日はとことん運が悪いらしい。
そして、現在に至る。いっそ財布の中に入っている万札を投げて気を逸らしている隙に逃げようかなどと考えていたが、こいつらにお金をくれてやるのも癪だ。
そして、暗殺用の武器を使うことは論外だ。
悩んだ末に、さらに路地裏に逃げることにした。
相手は怒声を発しながら走ってくる。武器は持ってなさそうだが、あまり捕まりたくはない。
路地裏をひたすら逃げ回る。彼らは団体で追いかけてきていて、バラバラになってこちらを追い詰めるほどの頭はないらしい。
しかし、私の脚力では彼らに追いつかれこそしないものの、引き離すだけの脚力はない。とはいえ、頭の中で路地裏のマップを作りながら逃げているので、彼らと同じペースで走っているなら、ぐるっと回って入ってきたところから逃げられる。
そして、路地裏から脱出した私は、たまたまそばにあった高級そうなバーにすぐさま駆け込んだ。ここに入ったところは見られていない上、人通りの多いところなのであのチンピラたちはもうこちらに手出しはできないだろう。
あまり締まらない結末だが、結局私は無事なので喜ぶべきだ。駆け込んできた私をどうしたのかという目で見ているバーテンダーに注文をする。
「そちらのロイヤル ハウスホールドでロブ・ロイを、比率はウイスキーとベルモットを3:1でお願いします。」
結構無茶苦茶な注文をしたが、バーテンダーはかしこまりましたと言って丁寧に仕上げてくれた。
贅沢なカクテルを飲みながら、時計を見る、日没まであと1時間半ほどだ。それまではここで時間を潰しつつ、のんびり待つことにする。
今日父から依頼内容を聞かされる予定だが、それはここを日没過ぎに出ればちょうどいい。追加でギムレットを頼みつつ、この静謐な空間をゆっくり楽しむとしよう。
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