30 それは突破口となる

『セブン・スターズの予備生、ねェ。その住ませている子はなにをやらかしたんだい?』

「んーとね、カイザ・マギア使っちゃったみたい! 13歳で帝王の魔術使えるとかヤバくね!?」

『恐ろしい話だ。どうせキズナってガキだろ?』

「え? なんで分かったの?」

『散々話してくれたじゃないか。可愛い妹みたいな子ができたって』

「あー、確かに! ルーちゃんに隠し事はしないもんね!」

『そしてスピーカーフォンにしていると。キズナ、私が教えられることは少ないぞ? パーラから訊いたと思うが、私も転生者だからな』ルーシは一呼吸置き、『だが、オマエはすこし奇妙な転生をしている。サキュバスとのハーフなんだろ?』


 緊張の面持ちで、キズナはルーシとの会話に臨む。


「う、うん」

『だったら突破口はいくらでもある。いまから私のところへ来られるか? こういう話は早く詰めちまったほうが良い』

「わ、分かった」

『なんだ? 緊張しているのか?』

「そりゃ、17億メニーのヒトと話しているんだもん」

『値札なんて、戦場に出りゃ勲章と変わらない。勲章が闘いで役立つか? 役立つとしたら、そりゃ法廷の場においてのみ、だよな?』

「……君、日本から来たの?」

『ああ』


 ルーシはあっけらかんとした態度で答えた。


『ともかく、時間は有限だ。パーラのスマホに位置情報送るので、こちらへ来い。不安だったらパーラを連れてきても良いぞ』

「そうする。ありがとう」

『感謝するにはまだ早いさ』


 通話は切られた。キズナ、パーラ、メントの3人は、ただちに送られてきたルーシの位置情報を閲覧し、揃って口を開ける。


「連邦情報局? アイツ、なんでスパイどもの巣窟にいるんだ?」

「分かんない……。そういえば、ルーちゃんがいまなにでおカネつくってるのか聞いてなかった」

「連邦情報局ってなに?」キズナはそう言った。

「あー。かいつまんで言うと、国内と海外の諜報活動を行う機関ってところだな。セブン・スターズほどじゃないけど、なかなかの猛者が揃ってるって噂だ」

「と、ともかく、私とキズナちゃんで行ってくるよ。だいぶ怖いけどね……」

「だったらあたしも着いていこうか?」

「いや、ルーちゃんの指定は“キズナちゃんと私”だから、メントちゃんが行ったらルーちゃんなにもしてくれないかもしれない」

「アイツ、結構意地悪だからなぁ……」


 そんな“意地悪”な少女の元へ、キズナとパーラは向かっていくのだった。


 *


 まだ深夜料金にはなっていないタクシーで、連邦情報局、通称『FIS』のビルにたどり着く。

 パーラが代金を払い、運転手に「ありがとうございました~」と言ったら、威圧感あふれる窓のないビルがキズナたちを待ち構える。


「行こっ、キズナちゃん」

「う、うん」

「って、あれ? ルーちゃんじゃん」


 が、ビルからVIP待遇のごとく銀髪碧眼の少女が出てきたことで、中に入る必要性はなくなったらしい。

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