シーズン2 Stone Cold Crazy-息の続く限り挑み続けろ-

28 魔術師免許

 あれから1週間、キズナはすっかり学校に慣れていた。特別講師になってくれたキャメルやホープから魔術とロスト・エンジェルス語を学び、いよいよ充実した学生生活を過ごしつつある。


「自殺しておいて良かったのかもね」


 そう言っておどけるキズナは、夕暮れの中パーラとメントの待つ家へ帰っていく。


「ただいま」

「おかえり~!! キズナちゃん、なんか封筒来てるよ!」


 パーラが出迎えてくれた。彼女は茶色い封筒をキズナに差し出す。


「なに、これ」

「分かんない! でも、政府はいつも封筒でなにか送ってくるから、たぶん行政のものだと思う!」

「嫌な予感しかしないね」


 キズナは寒い玄関から暖かいリビングへと入り、封筒をビリビリと破っていく。


「なんだ、これ」

「んー? どしたの?」

「魔術師ライセンスを取得してくれ、だってさ」

「魔術師免許? キズナちゃん13歳だから関係ないでしょ」


 魔術師証明証。18歳以上から獲得することのできる、魔法使いであることを示す免許だ。これがあれば、就職の幅が広がるというし、評定金額も上がるともいう。

 ただ、パーラが言ったようにまったく関係ない話だ。サキュバスとのハーフのキズナの年齢は13歳。本来ならば獲得することもできないからである。


「あれかな、カイザ・マギア使ったからかな」

「カイザ・マギア? キズナちゃん、やっぱりすげえじゃん! いえーい!!」


 なぜか手を合わせようとしてきたので、パン、と手のひらを合わせた。


「でも、その年齢でカイザ・マギアなんて使ったら政府に睨まれちゃうよ! ロスト・エンジェルスでもカイザ・マギアを使えるヒトは限られてるんだから!」

「けど、1週間前くらいに使っちゃったんだよね。色々揉め事があってさ」

「マジ? だったら政府が出頭を求めてくるかも」

「怖いなぁ」


 そんな折、メントが帰宅してきた。「ただいま」と彼女が言うので、キズナもパーラも「おかえり」と返す。


「ねえ、メントちゃん。18歳未満の子がカイザ・マギア使ったら、どんな罰則があるのかな?」

「なに、もしかしてキズナがあの魔術を使ったってこと?」

「うん。不慮の事故みたいな感じだけど」

「そうか……。連邦政府はしつこいからな。キズナ、オマエ使い走りにされるんじゃねえの?」

「使い走り?」

「そ。魔術師ライセンスを付与してカイザ・マギアを使った罪を打ち消すために、連邦が抱えてる問題解決をしてくれ、ってな」

「面倒だなぁ」

「オマエ、本当に気ぃ抜けてるよなぁ……」


 それがキズナの美点なのだから仕方ない、と彼女は思いつつも、封筒の中に入っていた書類を良く読んでみる。


「なになに……“セブン・スターズ”ってなに?」

「は?」メントは怪訝な顔になる。

「“セブン・スターズ”? ロスト・エンジェルス最強の魔術師たちだけど、それがどうかしたの?」

「いや、その“セブン・スターズ”の候補生を無力化しろ、って書いてある」

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