19 おそらくライク的な意味

 確かに気になる話だ。自分への評価はよほどひどくない限り関係ないし、もし最悪なものであればホープがわざわざ話すわけもない。


「まず、アーテルちゃんからかな。あの子、キズナさんに片思いしてるみたいだよ~」

「片思い」

「そーそー。まあラブではなく、ライクだね。KOM学園内で初めて自分の相手してくれた、優しい子だって。きのうもオンライン面談したけど、どうやったらキズナさんと仲良くなれるかって質問ばかりだったよ~」

「アーテル先輩って他に友だちいないんですか? あ、いや、すげえ失礼な言い方だけど」

「んー。そこは本人が一番気にしてると思うよ。KOM学園の評定金額の序列第1位だし、内向的な性格の所為で誰にも声かけられないくらいだし、勇気出して話しかけてもビビられるだけだってね」


 よくよく考えてみると、アーテルの評定金額を知らないキズナは、「アーテル先輩って、“評定金額”いくらなんですか?」と訊いてみる。


「んー、2億5,000万メニーだね」

「へ?」

「3,000人いる学校の第1位ともなれば、それくらいの値札ついてるものだよ」


 政府が算出したキズナの価値が7,000万メニー。その3倍以上の評定をくだされているわけだ。


「マジかよ。あたしより1億5,000万メニー高けえの?」


 パーラとおしゃべりに勤しんでいたメントが反応した。


「“評定金額”は、なにも強さだけで演算されるものじゃないしね~。メントちゃんの魔術は破壊力抜群だけど、それ以外の評価は低めに出てるはず。それに、防御力や機動力も加味すれば、アーテルちゃんの金額はむしろ安いくらいだね」


 メントは無言でウイスキーをコップいっぱいに入れ、飲み干した。


「チクショウ!! 高校生に負けるなんて!」

「メントちゃん、お酒弱いんだからそんな飲み方したら駄目だよ~」


 パーラがそう言ってメントを諫める。


「まあまあ、落ち着いてよ。うちのほうが、メントちゃんより更に“評定金額”低いんだしさ」

「それでも負けるのは嫌いなんだよー!! チクショウ! まだ酒足んねえぞぉ!!」


 これは駄目なヤツだ。このあとパーラといっしょに絡み酒してくる未来が見える。

 と、思いつつ、キズナはホープとの会話を再開する。


「アーテル先輩がぼくと仲良くなりたいのは分かりました。ぼくもあのヒトは好きなので……上から目線な言い方になりますけれど、先輩・後輩の垣根を越えて仲良くしたいですね」

「うんうん。仲良くしてあげて。んで、イブちゃんのことも言っておかないとね」

「イブ先輩なら、デートする約束しちゃいましたけど」

「へ~! 良いじゃん! ならそのとき心境を語ってくれるかもね」

「けど、ホープ先生」

「な~に?」

「アーテル先輩とイブ先輩の間には、なんのトラブルがあったんでしょうか? アーテル先輩が昔は仲良かったって言ってたから」

「あー、それか。ゴメンだけど、その話はふたりから口止めされてるからさ」

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