第21話 サービスを返して

 テニスというスポーツはやる分にはとても楽しいのだが、プロの試合を見るのはお世辞にも楽しいとはいえない。それの原因はサーブだ。特に男子で顕著なのがサーブ速すぎてエース取り放題案件。


 そもそもサーブというのはラリーを先に始められるのだから有利になるのは言うまでもない、だからサービスという別名がついているのだが。それならブレイクなんて出来ないのではないかと思うが、そんなことではスポーツは興行として成り立たない。どんな試合でもタイブレークまで続く間延びした試合が続くのは選手も観客も疲れるものだ。だからサーブを入れなければいけないコートの大きさを絞っている。コートのおよそ25%ほどのエリアにエンドラインからネットに触れることなく打ち込まなければいけない。最初知ったときはかなり狭いと思った記憶がある。狭いからといってゆっくり安パイなサーブを打つものなら、あっさりリターンエースを決められてしまう。かといって速いサーブを入れるにはそれなりの技量が必要だ。それに良いサーブが入っても相手が完璧に打ち返してブレイクするパターンもある。これでなんとかサーバーが圧倒的な有利とならない均衡を作ってきたのだが近年は、それでもサーブで点が取れるケースも増えた。それはやはり長年のテニスの歴史や指導環境の良化から選手たちの技術レベルが格段に上がったからだ。ハイレベルなラリーが見られるようになるわけではなく打ち返せないから淡々と試合が流れる。見てて面白くない。


 こんなことは他のスポーツでも見られる。男子バレーボールもジャンプサーブの精度が上がったことでサービスエースがとても増えた。迫力はあるがバレーもまた、続くラリーの中でのガッツあるレシーブや意表を突くフェイント、コートに突き刺さる強烈なスパイクが魅力であって見られないのはとても悲しい。野球も投高打低といわれ打者が全然打てずロースコアのゲームが続くことがある。闘志あふれるピッチングは見物だし空振り三振なんかは見ていて気持ちが良い。でも1アウト2,3塁とか得点圏で主砲が相手とか観客にとって熱くなる展開が他にもあるはずだ。そこで三振に抑えたりする方がもっと湧くだろう。選手の技術が均等に上がらないとスポーツが興行としてバランスが悪くなると言うのは難しい問題だと思う。


 今回の話でいうならテニスプレーヤーはサービスのリターンの技術を上げられればと思う。ラリーが続けば続くほど見ている身としては不思議と身体が硬くなる。どっちに点が入るか流れが行くか。一点一点の攻防がより魅力的になればスポーツとしてより箔がつくのではないのだろうか。

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