第5話 お忙しくないところっていつだよ!

 マジで嫌なんだがどうする仮病使って逃げようかな、3週間ぐらい逃げれば諦めてくれるんじゃね?電話依頼なんて俺が一番苦手としている部類の仕事じゃんやばいって。もうマジ無理リスカしよ。


 この日記を書き始める数時間前のことだ。一件のラインが届いたんだ。何だろうと思ってスマホを覗くとどうやら仕事の依頼のようだった。


 俺はいま大学が来年の2月に行うイベントの実行委員をやっていてというかやらされて、気乗りはしなかったからできるだけ仕事の楽そうな班に入ったのよ。チラシ・ポスター班ってやつでさ、めっちゃ楽そうじゃん。チラシのデザインを出してキャンパス内のそこら中にペタペタ貼る。そんなもんだと高をくくってたんだよ、実際はそんなもんじゃなかったんだわ。チラシやポスターを貼ってくれそうな近隣の店や学校に許可を取りに行く。遠ければ電話をかける。どちらかというと事務的な仕事が多かったんだ。主催が学生だからこんなこともしなければなんないんだけど初めて知ったときは絶望したね。あぁ...やっちまったって。俺には絶望的に向いてないやつだわって。


 でもね俺ももう18歳の成人だ。こんなことでくよくよしてちゃ社会で生きていけないだろって腹をくくって担当の店に電話をかける決意をしたんだ。そのときね電話じゃ無くても実際に店を訪問して許可を取るって方法もあるのを知ったんだ。そっちの方が確実じゃねって思ってあっさり意見を翻したね。だって電話って怖くね?誰が出るかもわかんないのに時間も気にせずもしもーしって迷惑すぎんだろ。店にかけるわけだからそりゃ営業時間内にかけなきゃならないっしょ、そんときもし「すいません、今忙しいので後にしてください」とか言われたら俺心折れるよ?そうですよねすいませんって弱々しく返すと思うよ?それが怒り気味なら尚更きついのよ。許可どうこうの前に主題すら話せてないからまたかけないと思うと更に億劫になる。どの時間がお客さん少ないとかわかんないから余計気を遣うようになってまじで精神的にもクルのよ。だから実際に店を訪れていい感じの時に突入することにしたんだ。


 幸いどの店も大学に近かったから楽で順調にいってたんだ。が期限最終日、事情があって大学に行けなかったんだ。残すは後一店舗、もちろん大学の近くにあってその日に訪れる予定だった。でも行けない。どうする?.....電話しか無いよなぁ。二度目の腹くくりの後電話の準備をした。このとき正直大学受験よりも緊張した。面と向かって説明するのはしゃべり以外の伝え方もありそこまで難しくない。でも電話だと自分の喋りでしか伝わらないから説明をミスったら終わりなんだ。説明のフォローをせねばならずだらだらした時間になり相手の心象が悪くなる。俺のこの電話にイベントの是非がかかってると思うと異様に緊張してしまった。

「...やっぱやめるか?」

 心にそんな思いがわく。仮病でも使って他の人に任せても問題は無いんだぞ?スマホを持つ手が震えた。

「でもこれは俺に与えられた仕事で...!」

 そんな状態が10分ほど続いたその時

 ....南無三!!

 心を決めた俺はためらいの時間を作らないようスマホに素早く番号を打ち後戻りできない状態を作った。


プルプルプル


 ぶっちゃけ過呼吸気味になっていた気がする。頭の中で何度もはじめの挨拶・イベントの説明・今回の電話での要望を端的に繰り返した。完璧なはずたぶんそうだろう......


プッ...


 来たかっ!ええとまずは「お忙しいところ大変申し訳ございません××大学1年の...」って言うんだぞおれ!

「おかけになった電話番号は現在使われておりません」

 出なかった。

ズコーーってマジでなった。それと同時にすごい安心してしまった自分がいた。どうやらその店はもう潰れているらしかった。


 もう仕事は無いなって安心してたらまた電話依頼の仕事が来た俺の気持ちわかるみんな?唖然として持ってたシャーペン落としたわ。これまでの話でわかるようにおれ結局一回も電話依頼してないんよね。ちょっとまずいぞこれしかも今回は小学校にかけないとだから流石に出向くのはリスク高いて。遠いし。これはまさかのあさってまでと来た。ちょいちょいちょいまだその心の準備ってもんがですね出来てないんよ。だからさ....あのさ....もう待ってくれよ...まじやりたくねぇ...!


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