始まり

 彼の名前は、秤正義はかり まさよし、間違いなく、この世界で最も狂人善人だ。

 しかも、見た目は、イケメンでしっかりと、コミュ力もある。

 主人公みたいな人間だ。

 さて、これから始まるのは、彼を主人公とした、誰もが見たがる、悪役を倒すかも知れない物語である。


 秤みたいな人間は、こんな場所ではきっと生きづらいだろう。

 それは何故か?秤は、とても治安の悪い高校に通っていた体。

 決して秤が頭悪いんじゃない。いや、ある意味悪いか。

 この、秤がこんな死ぬほど治安の悪い高校に通っているのは、秤がそんな治安の悪い学校があるなら、僕が行って正す!とか、言ったからだ。

 馬鹿だ、たった一人で何が出来るんだ?

 当然、秤の学校生活は、大変だった。

 目の前で喧嘩が起きれば止めては、授業を真面目に受けない奴は、注意して、それでいて、決してクラスの奴等を見離さない。

 本当にどうしようもないほどに馬鹿だ。

 ただ、そんな馬鹿にも、救いはあるというもの。

 秤の周りには、少しづつ人が増えていった。

 半数以上が、秤狙いの女子だが。

 ただ、間違いなく、秤は、みんなに影響を及ぼしていた。

 秤の純粋の心が、影響を及ばしたのだろう。

 そんな中、秤の元に一人の神様が現れた。一人って、おかしいか、一神の方が正しいな。

 そんな、神の名前は、ルーナ、とても可愛らしい、それでいて、神々しい人っぽい神様だ。

 それには、当然、秤は困惑した。

「あの、誰ですか?」

「私の名前は、ルーナこの世界の神です」

 ルーナは、とても、神様らしい口調でそう言った。

 ただ、それを、受け入れられるか、問題なのだが、これは余裕のクリアらしい。

「なるほど、神様ですか、それで、僕に何か用でしょうか?」

 秤は、誰かを疑うというのを知らないらしい。

 ただ、今回はそれがうまく作用したらしい。

 ここまでくると、逆に怖いまである。

「これから、この世界は、とある十体の悪魔によって、人類は、混乱に陥ちいります、そしていずれは、世界が破滅を迎える事になるでしょう。

 それを、防ぐ為にあなたには、戦ってもらいたいのです」

 これには、秤もびっくすると思うだろ?しないんだ。

 おかしいよな?頭のネジが十本以上間違いなく、外れてる。まあ、言う事でもないか。

「それで、僕はどうするればいいんですか?」

「秤正義、あなたには、これから、世界中で起きる殺戮を、止めてもらいます、そして、悪の軍団バフォメットを潰して欲しい」

 バフォメット、黒雨時くろさめ とき率いる、悪魔の集団だ、よく知ってるだろ?

 悪役黒雨の事は。

「バフォメット?どう、対処すればいいのでしょうか?ルーナ様」

「簡単です、あなたのその力を使いこなせれば大丈夫でしょう、能力の詳細は頭に送っておきました」

 彼の能力は、正義力。

 ヒーローの様な人間であればあるほど、強くなれる。

 単純それでいて、ヒーローに合う強大の能力。秤にとても合う、能力だ。

 そして、気付けば、ルーナは消えていた。

 それには、秤は何も気にせず、自分の頭の情報を整理し始めた。

 実に素晴らしい、対応力だ。

「……なるほど、このスーツみたいのは、ヘロスーツって言うんだ」

 なんていう、ネームングセンスのなさ、ヘロスーツ?ダサい、ただ、それには何一つ気にしてない様だ。

 やっぱり、頭がおかしい。

 そんな、頭がおかしい、秤は、早速そのダサい名前のスーツを装備した。

 これからは戦闘服と、呼ぶ事にしよう、ダサすぎる。

 そんな、戦闘服は名前とは違って、見た目は、厨二心をくすぐる見た目だった。

「おお、カッコいい、さて、少し飛んでみよう」

 そう、この戦闘服には、飛行機能が存在する。高性能の戦闘服だ。

 秤は、周りの目なんて気にせず、空を飛ぶ。

「ああ、綺麗だ」

 薄汚く、穢れていて、面白いほどに醜い世界を見て、秤は言った、俺とは、感性が、考え方が違うらしい。

 本質を見る俺と、景色を純粋に見る秤、まあ、それが、主人公兼ヒーローに選ばれた理由だろう。

 そんな事はさておき、秤の行動を見てみよう。

 空を飛んで、何をするのか。

 街中を飛び回り始めた、そして、困った人が居ると、手伝い始めた。

 真っ先にする事がそれか?

 本当に、人としては、最高だな。

「大丈夫ですか?お持ちします」

 他にも、同じ戦闘服を着て、人助けしてる人が一人だけ居た。

 見た感じ、女性の様だ。

 顔が見えるので、どんな、人なんかも分かる、見た感じ、かなり美人の様だ、その上、秤とは気が合いそうだ。

 この物語のヒロイン的な存在になるかも、知れない。

 ただ、秤は、その人と軽く会釈して、また困ってる人を探し始めた。

 思ったより、あんまり、物語には関係しないのかも知れない。

 さて、そんな、ヒロイン予想は一旦置いておこう、それより、今は世界で聞こえてる声についての方が大事だ。

 その声と言うのは、あの、ルーナの声だ。

 要するにあの、世界を滅ぼそうとする軍勢が現れるから、頑張って対処してね。

 って事だ、これには当然、SNSが盛り上がった。

 世界中から聞こえてる事から、事実かも知れないだとか、嘘だ、とか、俺が神から力を授かったぞ!だとか、あんなのは神ではありません、とか色んな、声が挙がった。

 それにしても、意外だ、思ったより信じてる人数が多いようだ。

 それも、日本人に多い傾向がある。

 あれか、アニメとかに近いから、あんまり驚きが少ないのだろうか?

 例えば、魔法があると、魔力があったりと、そういう常識が日本に蔓延ってる様に、こういう風に神が出てきたら、本当の事しか言わないみたいな、そういう常識があるのかも知れない。

 もしくは、急に世界が滅ぼらされるとか、言われて信じていなくて、適当な事言ってるとかかも知れない。

 そんな事に興味はない、秤は、その後一時間ほど人助けをして、家に戻った。

「ただいま、お母さん」

「その服どうしたの?」

 と、秤の母親が不思議そうに言った。

 当たり前だ、実の息子が急に変な服を着て帰ってきてるにだから。

 厨二病を疑うか、不思議に思うかのどちらかだろう。

「ああ、これ、僕が選ばれたんだ、お母さん」

「選ばれたって、さっきの声の奴!?」

「そうだよ、お母さん」

「おー!凄いじゃん!流石私の息子!」

 と、嬉しそうに、秤の母親は言った。

 どうやら、心配するというより、神に選ばれた優秀の子供だった事に嬉しい様だ。

 どうしてここまで、信じられて、嬉しく出来るのかさぞかし疑問だ。

 ただ、それでも、母親が嬉しくなっていて、秤はかなり嬉しい様だ。

「うん!でしょ!」

 と、元気よく返事した、俺だったら、間違いなくこの母親を殺してた。だって、死ぬかも知れない、子供を心配せずに、ただ、周りに言うつもりの、母親なのだから。

 しかも、流石私の子と、言う辺り自分が凄いのだと、周りに見せつけたい自己顕示欲の塊の様な人間だ。

 間違いなく、殺していただろう。だって、こんなにも強くなったのだから。

「さあ、今日は久しぶりに腕を振おうかな!」

 そう言って、母親は、肩を掴んで、少し腕を回した。

 秤は、母親の元気の姿を見て、少し微笑んで戦闘服を脱いで、制服に戻った事を確認して、自分の部屋へと向かった。

 その時、また、声が聞こえた。ルーナの声だ。

「たった今、南極、北極に居た人間は全員、滅ばされた」

 始まったのだ、遂に、悪役による侵攻が。



「ハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!」

「おい、おい、こんなんで良いのかよ!」

 と、黒い肌で黒い目をした、ジョンは、楽しそうに言った。

「そうだ、こうやって、苦しめとけば良いんだよ!」

 俺は、ルーナから貰った、刀で男の足を刺した。

「ああ※※※※あああああ※あああ!!」

「うわー、趣味悪いなー、うちのボス」

「お前もだろ?ジョン、人間の眼を集めるなんて」

「いやいや、ボス、俺のは、コレクションですよ、コレクション」

 そう言いながら、死体の眼球を取り出していた。

 取り出した後、どこかへと、眼球は消えた。

「俺も、似た様なもんだ!」

 そう言って俺は、刀を目に刺した。

「あああああ※※あああ※※」

「ああー、貴重な眼球が」

「安心しろ、片方は残しといてやるから」

「まあ、なら良いすけどねー」

 すると、後ろから、風を切る音が聞こえた。

 恐らく、マラーだろう。

「二人共、さっさと殺してあげなさいよー」

 と、自慢の長い茶髪の長い髪を靡かせながら言った。

「うるせ、宗教狂いが、それに、殺してないのはボスだけだ」

「何が、宗教狂いですか!死こそが救いなのですよ!?」

「はー、また始まった、うるせー」

「その態度は何!」

 そんな、やりとりが交わされる、裏で俺は男の腹を刺した。

「あああああ※※あ※※あああ!」

「やっと、殺す気になりましたか?ボス」

「いーや、殺す気はないよ、今はまだ」

 俺は、しゃがんで、動けない男と同じ目線になる。

「なあ、一つ俺とゲームをしないか?勝てば、生き残れるんだが」

 男は必死に、頷いた。

「よし、じゃあ、今から追いかけっこしよう、俺が今から出す、とっても、遅い犬に追いつかれずに今から行く俺の所に、来れれば生き残らせよう。安心しろ、足は治してやる。やるか?」

「やります!やらせてください!」

 と、男は必死に言った。

 俺は、足を触って治す。

 俺は、笑ってる事を、自覚しながら、飛ぶ。

「それじゃあ、五秒後にゲームスタートだ」

 俺は、五秒で、ある程度距離を取った。

 男は、走り出した。

「そういえば、犬は、あと二秒経ったら走り始めるから!」

 俺は、犬をあそこに出して、待機させる。

 男は、床が氷の所為だろう、少し滑りかけた、が、なんとか持ち堪えて、走った。

「二秒たったぞー!」

 犬が走り出した、男の数倍の速さで。

「あああああああああ!来るなああああああ!」

「ハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!」

 男は、襲われて、地面に叩き込まれた。

 俺は、男に近付く。

「この野郎!話が違うじゃないか!」

「話?ああ、そうか、お前はお前目線での、とっても遅いって思ったのか俺が言ったのは、俺目線での、とっても遅いだ」

「ふざけんな!そんな、理屈が!あああ※※※※※あああ※※※あああ!」

「ハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!」

 犬が、男の腹を食べ始めた。

「辞め、ああああ※※※※!!」

 内臓が、床に飛び散る。

 血がダラダラと、足元まで流れて来る。

 骨が、バキバキと音を立て砕かれる。

 犬の食べ方が雑過ぎるのか、はたまた、元々汚かったのか、男の腹の中は、ぐちゃぐちゃになって、そして至る所に穴があった。

「犬、お疲れ、もういい」

 もう、こいつから、聞ける悲鳴はないだろう。

 残念、に思いながらも、眼球だけ、綺麗に取り出した。

「行くか」


「あっ、戻ってきたー、ボスー、聞いてよー」

 と、金髪で天然パーマのネルが自慢の青い目を上目遣いで見せてきながら言ってきた。

「どうした?」

「宗教ババアと、目玉馬鹿が、僕を虐めるんだー」

「虐めてねえわ!その、目ん玉をコレクションに加えてやろうか?」

「ば、ババアって!その心、救いが必要な様ね!」

 二人共、怒りを露わにして、武器を取り始めた。

「ネル、本当は?」

「……ボスの悪口言ってた、目玉馬鹿が」

「言ってねえよ!殺してやろうか!」

 これは、嘘だろう、ネルは嘘を吐いてるだろうな。

「本当は、何もしてなくて、ただ、話してたとかだろ?」

「その通り、でも、これから、虐めるかも知れないですね」

 と、言いながら、武器を構えた。

「助けてー、ボスぅ」

「これは、ネルが悪い」

「えー、まあ、そうだけど」

 本当に、子供らしいというか、イタズラ好きだな。

「イタズラも、ほどほどにしとけ、ネル」

 対処するこっちの身にもなって欲しいものだ。

「はーい」

 と、言ってもどうせ、またやるんだろうな。そう思ったが、追求はしない。

「ほら、これ、ジョン受けとれ」

 俺は、さっき取った眼球を投げて、渡す。

「ありがとうございますっと」

 ジョンは、眼球を受け取ってどこかへしまった。

 潰してないと良いが、大丈夫だよな?

「それより、居なかったすねー、能力持ち」

「当たり前でしょう?受け取った瞬間に、開始したんだから」

「そうだけど、一人くらい来ても良くね?」

「居ない方が救いやすいでしょう?」

「それも、そうだなー」

「二人共、それを日本では、フラグって言うんだって」

「旗って事か?」

「意味は、よく分かんない」

 分からないのに、言ってたのか。

「オーストラリア、とかにはないのか?こういう事言ったら、死ぬキャラみたいな奴」

「居る居る、その概念を旗って言ってるのか?」

「その通り」

「珍しい、文化かおありなんですね、日本は」

「日本は、というより、国で別々に分かれりしないか?」

「まあ、そうですね」

 そんな、他愛のない話を終えて、俺達は、南極、北極の侵略を終わらせた。



「もう!?お母さん、見てくる!」

「え!?」

 秤は、母親の言った事を無視して、戦闘服を着て外に出た。

 恐ろしく、速い速度で。だが、南極、北極に行くには、時間が、かかるだろう。


「人、どこだろう」

 南極に着いた所で、飛びながら、建物を探した。

 少し、飛んでいると、建物が見え始めた。

「中に入ってみるか」

 秤は、入口の前まで行き、中に入った。

 その時、グチャ、そんな音が秤の耳に届いた。

「え?今の何だろう?」

 そう言って、一度戦闘服を脱いで、スマホを取った後に、もう一度戦闘服を着て、スマホのライトで、暗い足元を照らした。

 そして、そこにあったのは、逃げようとした、誰かの死体の内臓だった。

「ああああああああああああ!」 

 思わず、スマホを投げ出した。

 そして、離れて、壁に頭をぶつけた。

「し、死んでる?どうなってるんだ」

 秤は、困惑しながらも、生き残りが居るかもしれない、そう思い中に入る事を決意した。

 投げたスマホを拾って、秤は部屋の奥を照らした。

 そこには、黒い山羊のお面を付けた、悪魔が居た。

「お前が、バフォメットか、どうしてこんな事をした!」

 秤は、目の前に居る、悪魔に怒りを露わにした。

「来ると思った、だって、お前はヒーローだもな」

「何言ってるんだ!」

 悪魔は、黒い刀を秤に向けた。

「そんな事より、お前一人だけなのか?」

「質問に答えろ!」

 秤は、執拗に質問に答えさせようとした。

 悪魔は、ため息を吐いて秤にゆっくりと近付いた。

「な、何をする気だ!」

「武器を構えろ、構えないなら、こいつらと同じ様にするぞ?」

 秤は、仕方なく、白い剣を取り出して、構えた。

 だが、気付けば足を斬られていた。

「ああああああ※※ああ※※※※※※ああ!!」

 秤は、地面に倒れた。

「痛いか?大丈夫、殺しはしない、お前はきっとこれから、俺を楽しませてくれるから」

 そこで、秤ふと気付いた、悪魔の右胸部分に弱点の様な物がある事に。

 秤はそれに、視線を向けた。向け続けた。

「にしても、脆いんだな、その防具」

 秤は、血をダラダラ流しながらも、決して絶望した顔や、苦しんでる顔を見せなかった。

 本当に気味が悪い。

「とりあえず、治してやるよ」

 そう言って、悪魔は、秤の肩を刺した。

「あああ※※※※※あああ※※※あああ!!」

 秤は、叫んでもなお、決して絶望した様な顔をしなかった。

「声は良いけど、顔がつまんないな」

 そう言って、悪魔は、秤に触れて傷を治した。

「あ、ありがとう」

「ありがとう?俺がやった傷だぞ?」

「いや、それでも治してくれたから」

「なるほど、あいつが選ぶ訳だ、それで?戦うか?」

 悪魔がそう言うと、秤は手を上げた。

「無理だね、僕には勝てない」

「そうか、なら、俺も今は殺す気ないし、俺はお前に一つ苦しんでもらって、帰る事にする」

 そう言って、悪魔は秤の肩に触れた。

 その時、秤はスマホを落として、自分の喉に手を当て始めた。

「なんだ、喉に違和感が、乾いてるような、吸われてるような、水ではない何かを欲してる様な、何だ、これ」

「さあ、なんだろうな?」

 そう言って、悪魔は外に出た。

「何これ」

 秤は辺りを見渡し始めた。

「スマホどこだ」

 秤は、見つけたスマホを取って辺りを照らした。

「何だ、この地獄は」

 秤は、思わず口を押さえた。

 秤は、立ち上がり、辺りを探索し始めた。

「……水を探そう」

 しばらくすると、秤は水を見つけた。

 そして、それを飲み始めた。

「うっ、おうぇえええええ」

 秤は、その水を飲んだ瞬間、気持ち悪い音を立てながら嘔吐した。

「な、なんで」

 秤の足に嘔吐物が当たる。

「気持ち悪い、口の中がぐちゃぐちゃする、喉の中も、全部気持ち悪い」

 少し口から垂れてた、液体を秤は手で拭った。

 秤は、自分の首に異常がないかを触って調べた。

「何だこれ」

 そして、秤は死体の血に視線を向けた。

「……違うよね?」

 秤は、自分の小指を切って、自分の血を口に入れた。

「うぇええええ」

 秤は、また、嘔吐した。



「ハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!」

 まさか、血を飲み始めるとは、一体どんな頭をしてるんだ。

「何で、そんなに笑ってるですか?ボス」

「ああ、気にするな、それより、さっきはありがとな、後ろから足斬ってくれて」

「うん、どういたしまして!」

 ネルは、とても良い笑顔を見せた。

「じゃあ、戻るか」



「どうすれば良いんだ、これ、どんどん強くなってくる、早く帰ろう」

 秤が外に出ると、悪魔はもう居なかった。

「どこ行ったんだろう?」

 秤はそんな事を呟きつつも、家に一直線に向かった。



 秤は、家に着いてすぐに冷蔵庫から、色んな飲み物を取った。

 そして、飲む度に、嘔吐した。

 その時、何かが、家のポストに入った音がした。

 それを取る為に秤は、玄関に向かった。

「何が送られたんだろう」

 秤は、ポストの中を見た。

 そこにあったのは、秤へと書かれた紙が貼ってある、瓶が十本近くあった。

「これは、もしかして?」

 そう呟いて、秤は、一つの瓶を取って飲み始めた。

「ああ、美味しい!」

 ゴクゴクと、後先考えずに飲み始めた。

 一つの瓶を半分飲み干した所で、飲むのを辞めて、瓶を抱えて家の中に入り始めた。

「これで、僕はこの渇きを潤わせれるのかもしれない」

 秤は、走って自分の部屋へと向かった。



「ボス、どうしてあの男を生かしたんですか?」

「どうして?簡単な事だ、そっちの方が楽しめるかもしれないからだ」

「眼球一個くらい取ってくれても良かったのに」

「まあ、良いだろ、別に次がある」

「まあ、そうですけど」

「最高の瞬間になったら、殺してやるから、安心しろ」

「なら、その時を楽しみに待ってますよ」

 そうだ、まだ殺す時じゃない。

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